1. 問い合わせを「さばくだけ」で終わっていませんか

問い合わせ対応の現場は、目の前の一件を返すだけで精一杯になりがちです。返し終われば次が来て、また次が来る。この繰り返しの中では、たまっていく問い合わせデータを振り返る時間がありません。
その結果、同じ問い合わせが繰り返されても気づかず、増えている不満の芽も見逃します。お客様からの要望も、担当者の記憶に少し残るだけで、商品や他部署には届きません。本来なら改善のヒントになるはずの情報が、対応と同時に消えていきます。
ここでAIが効くのは、大量の問い合わせをまとめて読み、分類し、傾向を出す作業を短時間でこなせるからです。人が全部を読み返すのは大変ですが、AIなら一気に俯瞰できます。ただし「分析して」と丸投げすると、当たり障りのない要約しか返りません。鍵は、分類の仕方と、見たい観点を指定することです。次の章から進めます。
2. まず問い合わせを分類してタグを付ける

分析の第一歩は、バラバラの問い合わせを、意味のあるまとまりに整理することです。カテゴリを人が先に決めず、データから設計させるのがコツです。
# 役割 あなたは、カスタマーサポートのデータ分析が得意なアナリストです。 # やってほしいこと 以下の問い合わせを分類し、タグを付けてください。 # 問い合わせデータ (一定期間の問い合わせ内容を貼る。1件1行でもよい) # 進め方 1. まず、問い合わせを分類するカテゴリを、データから自分で設計する(例: 使い方 / 不具合 / 料金 / 要望 / 解約 など) 2. 各問い合わせに、カテゴリと緊急度(高・中・低)のタグを付ける 3. カテゴリごとの件数を集計する # 出力 - 設計したカテゴリの一覧と、それぞれの定義 - カテゴリ別の件数(多い順) - 代表的な問い合わせ例を各カテゴリ1つ # 守ること - 分類に迷うものは「その他」に逃がさず、なぜ迷うかを一言添える - 氏名や連絡先などの個人情報は出力に含めない # 仕上げ カテゴリ設計が実態に合っているか自己点検し、分けすぎ・粗すぎがあれば整理し直してください。
なぜこのプロンプトが効くのか
- カテゴリを人が先に決めず、データから設計させています。実態に合った分類になり、既存の枠に無理やり押し込めずに済みます。
- 緊急度のタグも付けさせるので、後で「急ぎの不具合だけ」を抜き出すといった使い方ができます。
- 迷ったものを「その他」に逃がさせないので、新しい傾向の芽を見落としません。
これで、バラバラだった問い合わせが、件数のわかる地図になります。次は、この地図から改善点を読み取ります。
3. 傾向と増減から、改善すべき点を見つける
分類できたら、そこから「何を直せばよいか」を読み取ります。件数の多さだけでなく、増減に注目するのがポイントです。
# やってほしいこと 分類した問い合わせデータから、対応や商品を改善すべき点を見つけてください。 # データ (前のステップで分類・集計した結果を貼る。可能なら前月との比較も) # 出してほしいもの - 件数が多い、または増えているカテゴリと、その背景の仮説 - 「FAQや説明で減らせるもの」と「商品・画面の改善が必要なもの」の切り分け - すぐ手を打つべき優先度の高い課題を3つ(理由つき) # 守ること - データにない断定をしない。仮説は仮説と明示する # 仕上げ 3つの課題それぞれに、明日から試せる小さな一手を1つずつ添えてください。
なぜこのプロンプトが効くのか
- 件数だけでなく「増えている」変化に注目させています。急に増えた問い合わせは、不具合や仕様変更のサインだからです。
- 「FAQで減らせる」か「商品を直すべき」かを切り分けさせるので、対策を打つ相手(サポートか開発か)が明確になります。
- 「明日から試せる一手」まで出させるので、分析が報告書で終わらず、行動につながります。
4. お客様の声を、他部署に伝わる形にまとめる
問い合わせに含まれる要望や不満は、開発や企画にとって貴重な情報です。ただ、生のまま渡しても動いてもらえません。伝わる形に翻訳します。
# 役割 あなたは、お客様の声を社内に届けるカスタマーサポートの責任者です。 # やってほしいこと 以下の問い合わせや要望から、他部署(開発・企画・営業など)に共有するVOCレポートを作成してください。 # 材料 (要望や不満が含まれる問い合わせを貼る) # 出力 - お客様が求めていることの要約(3〜5点、多い順) - それぞれ、実際の声を1つ引用(個人が特定される情報は伏せる) - 「これは誰に届けるべきか」を部署ごとに添える # 守ること - サポートの主観で盛らず、声の多さや強さに忠実にまとめる - 個人が特定される情報は削除・匿名化する # 仕上げ 最後に、このレポートで社内に一番伝えたい1点を、見出し1行にまとめてください。
なぜこのプロンプトが効くのか
- サポートに集まる生の声を、他部署が動ける形に翻訳させています。声が現場に埋もれるのを防ぎます。
- 実際の声の引用を入れさせるので、数字だけよりも説得力が出ます(個人情報は匿名化を明記)。
- 「一番伝えたい1点」を見出しにさせるので、忙しい他部署にも要点が刺さります。
5. 問い合わせの自動分類とダッシュボード化で、改善を回し続ける仕組みにする

ここまでのプロンプトは、その場で使うだけでも効きます。ただ、毎回手でデータを貼って分析するのは続きません。使い込むと「問い合わせが届いた時点で自動で分類され、傾向がいつでも見える」状態にしたくなります。
実際に組むと、たとえばこうなります。問い合わせがフォームやメール、チャットで届くと、その内容をAI(Difyのような社内アプリ)が自動で分類・タグ付けし、集計してダッシュボードに反映する。急に増えたカテゴリはアラートで知らせ、月次では傾向レポートとVOCのまとめが自動で作られる。担当者は、日々さばきながら、全体の傾向を常に把握できます。
安定して使うには、ここから先の作り込みが必要です。自社に合った分類の設計とAIへの覚え込ませ方、個人情報を除いて安全に扱う仕組み、ダッシュボードや通知ツールとの連携、増減を判断するしきい値の調整、といった調整です。この「便利なプロンプト」と「届いた時点で自動で分析される仕組み」の間にある距離が、作り込みの正体です。
まずは第2章から第4章のプロンプトで、手元の問い合わせを分析してみてください。さばくだけだった問い合わせが、改善のヒントに変わります。そして「届いた時点で自動で分析・可視化したい」と思ったら、そこがサポートを改善エンジンに変える入口になります。自動分類やダッシュボードの構築といった作り込みは、実装と運用の勘所を持つ相手に一度相談すると、遠回りを避けられます。
まとめ
問い合わせ分析でサポートを変える鍵は、対応でためたデータを、改善のヒントとして読み解くことでした。
- カテゴリをデータから設計し、問い合わせを分類・タグ付けして見える化する
- 件数と増減から、FAQで減らせるものと商品を直すべきものを切り分ける
- お客様の声を、他部署が動ける形のVOCレポートにまとめる
まずは手元の問い合わせを、第2章のプロンプトで分類してみてください。さばくだけだった問い合わせが、次の改善につながります。そして「届いた時点で自動で分析したい」と思ったら、そこが仕組みにするタイミングです。

