- 2025年下半期に顕在化した、AIトレンドの「5つの転換点」
- 2026年に「AIを使わない自由」が失われていく背景
- AI時代に求められる人材・組織のあり方と生き残りの視点
日本企業のAI導入はどこまで進んでいるのか
まず、日本企業がAI活用において、今どのフェーズにいるのかを確認しましょう。
「思ったより少ない?」企業導入率57.7%の実態

2025年の企業におけるAI導入率ですが、NRI(野村総合研究所)の調査によると約57.7%という結果が出ています。
参考
海外に比べればまだ伸びしろがある数字ですが、日本国内の普及スピードとしては決して遅くありません。
ただ、私の正直な肌感覚としては「もっと高いのでは?」と思っていました。自分の周りを見渡せばほぼ全ての企業が当たり前のようにAIを使っている印象だったので、まだ半数強というのは少し意外な事実です。
とはいえ、社会への浸透度は数字以上のものがあります。代表的な事例を2つご紹介します。
チームみらい・安野さんの当選
記憶に新しいのは、2025年7月に行われた都知事選でのチームみらい・安野さんの当選でしょう。選挙活動へのAI活用がテレビで連日取り上げられ、政治という堅い領域にも「AIの風」が吹いた象徴的な出来事でした。
参考
- AI活用した選挙活動、安野氏陣営の戦略に注目|MBSニュース
AI代替によるリストラと検索流入減少
一方で、手放しで喜べない現実も浮き彫りになりました。
外資系企業を中心に「AI代替によるリストラ」が現実に起き始め、マーケティング業界では「検索経由のサイト訪問減少」が深刻なトピックとなっています。
雇用の側面では、AIによって一部の業務が急速に自動化され、人が担う前提だった役割が見直され始めました。
検索の側面では、AIが直接答えを返すようになり、Webメディアという役割そのものが揺らいでいます。
どちらも、AIの進化によって「これまで当たり前だった仕事や仕組み」が前提から書き換えられつつある例だといえるでしょう。
参考
- 米テック企業でAI導入に伴う人員削減が加速|日本経済新聞
- AI検索普及によるWebサイト流入への影響について|X(旧Twitter)
2025年下半期、潮目が変わった「5つの兆候」
ここからは直近(10月〜12月)のトレンドから、特に重要と思われる動きをピックアップします。

1. 「お堅い業界」が動き出した
これまでAIとは縁遠いと思われていた業界での活用が目立ち始めました。特に私が驚いたのは医療業界です。
命に関わる領域だけに慎重論が根強かったのですが、診断支援や事務作業の効率化で一気に実用化が進んでいます。これは2026年以降、他の規制産業(建築や法律など)にも波及する重要なサインです。
参考
- 医療現場で進む生成AI活用、問診やカルテ作成を効率化|日本経済新聞
- 手術支援から新薬開発まで、医療AIの最前線|日本経済新聞
2. クリエイティブと権利問題の緩和
11月末にGoogleからリリースされた「Nano Banana Pro」は、画像生成のクオリティを一段階引き上げました。
そして特筆すべきは、あの著作権に厳しいディズニーがOpenAIに出資し、動画生成AI「Sora」にキャラクターデータを提供するというニュースです。
これまで対立構造で語られがちだった「IP(知的財産)ホルダー」と「AI開発企業」が手を組み始めた。これはコンテンツ産業にとって歴史的な転換点と言えます.
参考
3. AI業界への投資熱は、まだ冷めていない
権利問題や規制の議論が進む一方で、AI業界そのものへの投資マネーは引き続き流入しています。 その象徴的な例が、文字起こしサービスのNottaによる23億円の資金調達です。一時は「AIバブルは弾けた」といった声もありましたが、実際には用途が明確なプロダクトを中心に、資金と競争が集まり続けています。
参考
- 音声認識AIのNotta、シリーズBで23億円調達|日本経済新聞
4. ハードウェアへの波及(PC高騰と冷却技術)
最近「パソコンが高くなる」という記事を目にしませんか? 実はこれ、AI需要によるメモリ価格の高騰が原因と言われています。
また、地味ながら注目すべきはデータセンターの「冷却技術」です。AIを動かすには膨大な熱が発生するため、いかに冷やすかがテック企業の生命線になりつつあります。こうしたインフラ周りの変化も、AI時代の隠れた主役です。
参考
- パソコン価格高騰、AI需要でメモリ不足深刻に|ライブドアニュース
5. 採用現場の「異常事態」
学生がAIを使ってエントリーシート(ES)を書くのが当たり前になり、どれも高レベルで均質化してしまったため、「書類選考が機能しない」事態に陥っています。実際、書類選考を廃止する企業も出てきました。
これは学生の問題ではなく、AIの存在を前提に設計されていない採用フローそのものが限界を迎えている、というサインです。
参考
- 学生のAI活用で「書類選考」形骸化、企業も対策急ぐ|日本経済新聞
2026年の予測:AIによって世の中はどう変わる?
ここまで見てきた変化は、単発のトレンドではありません。
2025年後半に表面化したこれらの動きは、2026年に入って「後戻りできない前提」として定着していきます。
特に影響が大きいのが、「採用」と「働き方」です。
従来の選考フローや評価制度は、AIの存在を前提に設計し直さなければ、機能しなくなりつつあります。
2026年は、AIをどう使うかではなく、「AIを前提にどう人を見て、どう働くか」が問われる年になるでしょう。

「書類選考」が消滅し、AI活用力が評価基準に
応募書類で差がつかない以上、全員と面接するのは物理的に不可能です。その結果、企業は「誰を・どのように見るか」という選考フロー自体を見直す必要に迫られています。そのためAI面談システムの導入や、AI利用を見抜く技術への投資が加速するでしょう。
興味深いデータとして、人事業界大手のビズリーチがAI関連特許の保有数で1位になっています。これは、同社が「AIによるマッチングや評価」が今後の主流になると確信して動いている証拠です。
参考
- 人材業界でのAI特許保有数について|X(旧Twitter)
- 2026年7月期 第1四半期 決算説明資料|株式会社ビズリーチ(Visional)
AIを「使わない自由」がなくなる
LINEヤフーがいち早く「AI活用の義務化」を打ち出したように、2026年は多くの企業で「AIを使わない従業員は評価されない(あるいは居場所がなくなる)」フェーズに入ります。
これまでAI活用に難色を示していた層も、技術の進歩や若手社員の突き上げにより、変わらざるを得なくなります。
2026年は、AI活用が「できる人の強み」ではなく、評価制度の前提条件として扱われ始める年になるでしょう。
参考
- 大企業の「AI義務化」6カ月後の現在…LINEヤフーが取り組む現状|Business Insider Japan
少人数・高生産性チームへのシフト
最後に、避けて通れない話をします。
ある調査では、経営者の約18%が「1年以内の人員削減」を計画していると回答しています。
「AIに仕事を奪われる」という表現は好きではありませんが、「AIを活用して生産性を大きく向上した少人数のチーム」に、従来の大人数の組織が置き換わっていくのは避けられない流れです。
参考
ただ、全ての職種が危ないわけではありません。AI時代に残るのは、「AIに仕事を奪われにくい職種」ではなく、「AIを使って価値を拡張できる役割」です。判断・設計・最終責任を伴う仕事ほど、その傾向は強まります。
参考
- AI代替可能な職種と人間に残る仕事|日本経済新聞
最後に
2026年、AIは単なる便利ツールから使わないと仕事にならない必須インフラへと完全に移行します。
まだ導入していない企業、あるいは「なんとなく」使っている個人の方は、今のうちにどう共存して価値を生むかを真剣に設計する必要があります。
変化は怖いものですが、波に乗れればこれほど面白い時代もありません。
来年もプロナビAIでは、皆さんの業務に直結する実践的ノウハウ」をお届けしていきます。
