1. 人事・採用業務でChatGPTを使う前に、必ず知っておきたい3つの注意点
⚠️ 注記: 本記事で紹介する内容は執筆時点(2026年8月)のものです。法令・ガイドラインやAIツールの仕様は変更される可能性があるため、最新情報は各公式サイト・一次情報でご確認ください。

人事・採用業務でChatGPTを使う際、最初に押さえておきたいのが次の3つです。
① 応募者の個人情報をそのまま入力しない
個人情報保護委員会は2023年6月2日付で「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表しています。この中で個人情報取扱事業者に対し、生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合は、(1)その利用が特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認すること、(2)あらかじめ本人の同意を得ずに入力した個人データが応答結果の出力以外の目的(機械学習など)に利用される場合は個人情報保護法違反となる可能性があるため、生成AI事業者がそのデータを機械学習に利用しないこと等を入力前に十分確認すること、を求めています。また一般利用者向けの留意点として、入力した個人情報が機械学習に利用され、他の情報と統計的に結びついた上で、正確・不正確を問わず出力されるリスクがあることも示されています。
採用業務では、応募者の氏名・連絡先・経歴・現職の会社名といった個人情報を含む書類を、そのままChatGPTに貼り付けてしまいがちです。しかしこの注意喚起を踏まえると、これは避けるべき運用です。実務では、応募者名は「候補者A」、会社名は「現職の同業他社」のように、個人や特定企業を識別できない表現に置き換えてから入力することをおすすめします。また、契約しているAIツールが入力データを学習に利用しない設定になっているかどうかを、設定画面や公式ヘルプで確認することも大切です。設定の名称や場所はツールによって異なり、変更されることもあるため、組織で利用する場合は必ず情報システム部門や管理者に確認してください。
② 合否の判断そのものをAIに委ねない。公平性への配慮を忘れない
厚生労働省は「公正な採用選考について」の中で、就職差別につながるおそれがあるとして、企業に3分類・計14項目への配慮を求めています。具体的には、(a)本人に責任のない事項(本籍・出生地、住宅状況、家族の職業・続柄・健康状態・学歴・収入、生活環境・家庭環境など)、(b)本来自由であるべき事項(宗教、思想・信条、購読新聞・雑誌・書籍、支持政党、尊敬する人物、労働組合加入状況・社会運動への参加など)、(c)採用選考の方法(身元調査の実施、合理的な理由のない健康診断の実施、統一応募用紙によらない不適切な応募書類の使用など)です。
これは、これから紹介するプロンプトの中でも特に「選考の評価コメントの下書き」を作る場面で重要になります。AIに応募者情報を要約・整理させると、意図せず出身地や家族構成、思想信条を推測させるような表現が出力に含まれてしまうことがあります。プロンプトを設計する段階で、そうした属性への言及を明示的に禁止し、出力されたコメントに14項目に触れる内容が紛れ込んでいないかを、必ず人の目でチェックしてください。そして何より、合否そのものの判断はAIに任せず、必ず人が行うという原則を徹底してください。AIが作れるのはあくまで「評価の材料を整理した下書き」までであり、最終的な合否判断の責任は組織と担当者にあります。
海外に目を向けると、EUの「AI Act」では、求人広告のターゲティングや応募者フィルタリング、候補者評価などに使われるAIが高リスク分類に含まれるとされています。詳細な要件や適用範囲は欧州委員会の公式資料をご確認ください。また米ニューヨーク市でも、採用に使うAIツールにバイアス監査を求める条例があります。具体的な要件は市の公式情報をご確認ください。国内外を問わず、採用選考におけるAI利用は今後ますます規制やガイドラインの対象になっていく領域だと考えておくのがよいでしょう。
③ AIの出力には誤りが含まれうる。必ず人が事実確認する
生成AIの応答には、事実と異なる内容(ハルシネーション)が含まれることがあります。求人票の資格要件やスカウトメールの実績紹介、面接メモの整理結果なども、AIが作った下書きをそのまま使わず、実際の情報と突き合わせて人が確認してから使ってください。
以上の3点(個人情報を入力しない・合否はAIに決めさせない/公平性に配慮する・出力は人が事実確認する)を前提として、次の章から実際に使えるプロンプトを紹介します。
2. 【コピペOK】求人票・スカウトメール編

ここからは、そのままコピペして使えるプロンプトを紹介します。プロンプトとは、AIに「何をどう書いてほしいか」を伝える指示文のことです。〔 〕で囲んだ部分は、ご自身の状況に合わせて書き換えてください。応募者や現従業員の氏名・連絡先などの個人情報は入力せず、「候補者A」のような仮の表記に置き換えたうえで使うことを前提にしています。
① 求人票の職種別ドラフトを作る
あなたは採用担当者です。以下の情報をもとに、求人票の本文ドラフトを作成してください。 職種:〔例:営業事務、Webマーケティング担当、店舗スタッフ など〕 仕事内容の概要:〔箇条書きでよいので分かる範囲を記載〕 応募資格:〔必須・歓迎条件を分けて記載〕 働き方・条件:〔勤務地、雇用形態、給与レンジ、勤務時間などわかる範囲で〕 アピールしたいポイント:〔職場の雰囲気、成長機会、福利厚生など〕 条件: ・「仕事内容」「応募資格(必須/歓迎)」「働き方・条件」「募集背景・アピールポイント」の見出しに分けて書く ・専門用語は避け、未経験者にも分かる言葉で書く ・誇張表現(「必ず成長できる」等の断定)は避け、事実に基づいた表現にする ・性別・年齢・身体的特徴などを条件として示唆する表現が入らないようにする
出力イメージ(例)(職種「営業事務」を想定した出力例)
【仕事内容】受発注データの入力、電話・メール対応、営業チームのサポート業務を行っていただきます。
【応募資格(必須)】Excel・Wordの基本操作ができる方
【応募資格(歓迎)】営業事務や一般事務のご経験がある方
【働き方・条件】正社員/勤務地〔 〕/勤務時間〔 〕
このように見出しごとに整理された下書きが返ってくるイメージです。実際の給与レンジや勤務条件など事実に関わる部分は、人事側で必ず正確な情報に書き換えてから公開してください。
② スカウトメールの文面を作る
あなたは採用担当者です。以下の情報をもとに、候補者へ送るスカウトメールの下書きを作成してください。 募集職種:〔職種名〕 候補者のプロフィール概要:〔スキル・経験の傾向を一般化して記載。氏名や特定できる経歴は書かず「〇〇分野の経験がある方」のように書く〕 自社・ポジションの魅力:〔アピールしたいポイント〕 希望するアクション:〔例:カジュアル面談の打診、応募の案内 など〕 条件: ・件名と本文をセットで作成する ・冒頭で「なぜあなたにご連絡したか」が伝わる一文を入れる(プロフィールへの言及は一般化した表現にとどめる) ・売り込み過ぎず、対等な立場での打診というトーンにする ・文末に返信のハードルを下げる一言(例:まずはお話だけでも、といった案内)を入れる ・候補者を特定できる固有名詞(氏名、勤務先名、出身校名など)は本文に含めない
このプロンプトのポイントは、候補者プロフィールを「〇〇分野の経験がある方」のように一般化した表現でAIに渡すことです。スカウト対象のスキルセット自体はAIに要約させてよいですが、氏名や現職の会社名、出身校といった個人を特定できる情報は入力しないようにしてください。AIが作った下書きに、実際に送る相手向けの固有の言及(「〇〇でのご経験を拝見し」等)を人が書き足すという順番で使うと、個人情報を守りながら、パーソナライズされた印象のメールに仕上げられます。
3. 【コピペOK】面接編

③ 面接質問の設計をする
あなたは面接官をサポートするアシスタントです。以下の条件で、面接の質問リストを作成してください。 募集職種:〔職種名〕 面接の種類:〔例:一次面接(人柄・意欲確認)/二次面接(スキル・経験確認) など〕 特に確認したいポイント:〔例:チームでの協働経験、課題解決の進め方 など〕 面接時間の目安:〔例:30分〕 条件: ・「アイスブレイク」「経験・スキル確認」「志望動機・価値観」「逆質問の時間」の流れで、時間配分の目安も添えて質問案を作成する ・回答を深掘りするための追加質問例も1〜2個添える ・思想信条、家族構成、出身地、支持政党など、採用選考で確認すべきでない事項に触れる質問は一切含めない ・「はい/いいえ」で終わらない、具体的なエピソードを引き出す質問を中心にする
このプロンプトで作成した質問リストは、そのまま読み上げるための台本ではなく、面接官が事前に目を通して自分の言葉に落とし込むための土台として使ってください。特に、思想信条や家族構成など聞いてはいけない事項が混ざっていないかは、AIの出力であっても必ず人が最終チェックしてください。
④ 面接メモを整理する
以下は面接中に取ったメモです。読みやすく整理してください。 面接メモ(走り書き): 〔面接中に取った箇条書き・断片的なメモを貼り付け。候補者名は「候補者A」のように置き換える〕 条件: ・「経験・スキルに関する発言」「志望動機・価値観に関する発言」「気になった点・確認したい点」の3項目に分けて整理する ・メモに書かれていない内容を推測して補わない ・候補者の話し方や態度についての主観的な感想と、実際に話した事実(発言内容)は分けて記載する
走り書きのメモは、そのままだと後から読み返しても意図が分かりづらいことがあります。このプロンプトで整理しておくと、複数の面接官で候補者の情報を共有する際にも齟齬が起きにくくなります。整理の過程でAIが事実にない内容を補ってしまうこと(ハルシネーション)を避けるため、「メモに書かれていない内容を推測して補わない」という条件を必ず入れてください。
⑤ 選考の評価コメントの下書きを作る
以下は、ある候補者の面接での発言・行動に関する事実ベースのメモです。これをもとに、選考の評価コメントの下書きを作成してください。 面接での発言・行動メモ(事実ベース): 〔③④で整理したメモなど、事実に基づく内容のみを貼り付け〕 評価の観点:〔例:職務に必要なスキル、コミュニケーション、カルチャーフィット など、自社の評価基準〕 条件: ・メモに書かれている事実のみをもとにコメントを作成する。メモにない内容を推測・断定しない ・「思う」「感じた」といった主観の強い表現は避け、発言・行動の事実を根拠として記述する ・本籍・出生地、家族構成、思想信条、支持政党、宗教、健康状態など、採用選考で考慮すべきでない属性には一切言及しない ・合否の結論(採用/不採用)は書かず、あくまで評価材料の整理にとどめる
このプロンプトが最も注意を要するプロンプトです。 AIが出力する評価コメントは、あくまで「面接官が本来の評価シートに記入する内容を整理する下書き」であり、合否の判断そのものは、AIではなく必ず人が行ってください。 出力されたコメントに、1章で紹介した14項目(本籍・出生地、家族構成、思想信条、支持政党など)に触れる表現が紛れ込んでいないかを、送信・記録前に必ず人の目でチェックする運用にしてください。
4. 【コピペOK】内定者フォロー・社内文書編

ここからは内定者フォローと社内文書のプロンプトを紹介します。ここまでの求人票・面接編とは異なり、内定者フォローでは氏名や入社日といった特定の個人に関わる情報を扱う場面が増え、社内文書では就業規則など社内ルールとの整合性が求められます。個人情報はプレースホルダーのまま入力しないこと、法令・就業規則に関わる記述は断定せず必ず人事・法務担当者が確認することを前提に使ってください。
⑥ 内定者フォローの文面を作る
あなたは採用担当者です。以下の情報をもとに、内定者へ送るフォローメール(内定通知後、入社までの間に送る連絡)の文面を作成してください。 送るタイミング・目的:〔例:内定通知後のお礼と入社までのスケジュール案内、内定式前の連絡 など〕 伝えたい内容:〔箇条書きで。日程、持ち物、社内の様子など〕 文面のトーン:〔例:フォーマルだが温かみのある文面、カジュアルな文面 など〕 条件: ・内定者が入社への期待を持てるような、前向きで丁寧な文面にする ・事務的な連絡事項(日程・持ち物など)は箇条書きで分かりやすくまとめる ・返信・問い合わせ先の案内を文末に入れる ・内定者の氏名等は〔 〕のプレースホルダーのままにし、AIには実際の氏名を入力しない
⑦ 社内規程・オンボーディング資料のたたき台を作る
あなたは人事担当者です。以下の情報をもとに、新入社員向けオンボーディング資料(入社後の受け入れ・立ち上げ支援のための資料)のたたき台を作成してください。 対象:〔例:新卒入社/中途入社〕 資料に含めたい項目:〔例:入社初日の流れ、社内ツールの使い方、相談窓口の案内 など〕 自社の情報:〔分かる範囲の一般的な情報。就業規則の詳細な条文などは要約して伝える〕 条件: ・見出しごとに箇条書きで整理する ・法令や就業規則に関わる内容は、断定的に書かず「詳細は就業規則〔該当箇所〕をご確認ください」という案内にとどめる ・専門用語には簡単な説明を添える ・作成後、内容は必ず人事担当者・法務担当者が事実確認のうえ使用する前提とする
社内規程やオンボーディング資料は、法令や自社の就業規則と矛盾しない内容でなければなりません。AIが作成するのはあくまで構成案・たたき台であり、条文の引用や法的な記述が必要な箇所は、AIに断定させず「就業規則を確認する」という案内にとどめさせるのがポイントです。完成後は必ず人事・法務担当者が内容を確認してから配布してください。
5. 明日から始めるための3つのアクション
個人情報を入力しないこと、合否判断はAIに委ねず人が行うことという2つの原則は、すでに1章で触れたとおりです。ここでは重複を避け、それを踏まえたうえで「実際に何から始めればいいか」を3つのアクションに絞って紹介します。
① 社内で共有する「採用AI利用ルール」5行テンプレ
社内での使い方を統一するために、次のルールをそのままチャットツールや共有ドキュメントに貼り付けて使ってください。
- 応募者・候補者の氏名、連絡先、現職の会社名などの個人情報は、仮の記号(候補者Aなど)に置き換えてから入力する
- AIが作った文面・メモ・評価コメントは「下書き」として扱い、送信・記録前に必ず人が事実確認する
- 合否の判断はAIに委ねず、必ず人(面接官・選考担当者)が行う
- 評価コメント等の出力に、本籍・出生地・家族構成・思想信条・支持政党など採用選考で考慮すべきでない事項が含まれていないかを確認する
- 使うAIツールが、入力データを学習に利用しない設定になっているかを設定画面・管理者に確認する
② 始め方:小さく試して、記録する
いきなりすべての業務にAIを使う必要はありません。まずは次の順番で試してみてください。
- 比較的リスクの低い求人票のドラフト作成(本記事のプロンプト①)で1件試す
- 出力した下書きと、実際に公開・送付した文面を上長・チームに見せて感想をもらう
- 評価コメント(プロンプト⑤)など個人情報や公平性に関わるプロンプトは、まず社内の管理者・法務担当者を交えて運用ルールを固めてから使い始める
③ 効果の見方:時間とばらつきで判断する
効果を測る際は、大きな成果指標をいきなり狙うより、次の2つの分かりやすい指標から始めるのがおすすめです。
- 1件あたりの下書き作成にかかった時間(体感でよいので、使う前と後で比べる)
- 担当者ごとの文面・評価コメントの表現のばらつき(似た内容の記述が揃ってきたか)
人事・採用業務における生成AI活用の効果を定量的に示す日本国内のデータは、本記事執筆時点では十分に確認できていません。だからこそ、まずは自分たちの現場でこうした身近な指標から手応えを積み上げていくのが現実的です。
まとめ
ChatGPTのような生成AIチャットは、求人票やスカウトメール、面接準備、内定者フォローなど、人事・採用業務の「文章を書く」「準備する」負担を軽くする下書き役として活用できます。ただし応募者の個人情報を扱い、合否という重い判断にも関わる領域だからこそ、次の原則を守ったうえで使うことが欠かせません。
- 個人情報の取り扱い:応募者・候補者の氏名や連絡先はそのまま入力せず、「候補者A」のような仮の表記に置き換える(根拠:個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」2023年6月2日公表)
- 合否判断はAIに委ねない・公平性への配慮:評価コメントの下書きに本籍・出生地・家族構成・思想信条・支持政党など、厚生労働省が挙げる14項目に触れる内容が紛れ込んでいないかを必ず人が確認し、合否の最終判断は必ず人が行う
- コピペで使えるプロンプト:求人票のドラフト、スカウトメール、面接質問の設計、面接メモの整理、選考の評価コメントの下書き、内定者フォロー文面、社内規程・オンボーディング資料のたたき台まで7種類
- 明日から始めるアクション:5行の利用ルールを社内共有し、まずはリスクの低い求人票のドラフトから小さく試し、下書き時間や表現のばらつきで効果を確かめる
まずは、比較的リスクの低い求人票のドラフト作成から、本記事のプロンプト①を試してみるところから始めてみてください。小さく試して手応えを確かめれば、採用という会社の未来を左右する業務に、AIをどう組み込んでいくか、自社なりのやり方が見えてくるはずです。
出典・参考
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日公表)[https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/](https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/ (PDF一次資料: [https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf](https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf )。1章で紹介した個人情報の入力ルールの根拠です。正式には「注意喚起」という位置づけの文書です。
- 厚生労働省「公正な採用選考について」[https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html](https://kouseisaiyou.mhlw.go.jp/consider.html 。1章・3章で紹介した、選考評価コメントで配慮すべき14項目(3分類)の根拠です。
EU AI Act・米ニューヨーク市の条例については、要件が更新されるため必ず欧州委員会・ニューヨーク市の公式情報でご確認ください。

