1. 評価コメント作成が重くなりがちな理由と、AIを"下書き役"にする考え方
⚠️ 注記: 本記事で紹介する内容は執筆時点(2026年9月)のものです。各AIツールの料金・機能・データ取り扱い方針は変更される可能性があるため、最新情報は各公式サイトでご確認ください。
評価コメントを書く作業が重く感じられる理由は、多くの場合「事実がないから書けない」のではなく、「事実は頭の中や評価シートの断片にあるのに、それを読みやすい文章に整える作業に時間がかかる」ことにあります。特に部下の人数が多い管理職ほど、一人ひとり似たような構成の文章を、微妙にニュアンスを変えながら繰り返し書くことになり、負担が積み重なります。
ここで生成AIチャットを使うと役立つのが、「文章の構成・言い回しを整える」という工程です。評価対象者の実績や行動を箇条書きでAIに渡し、読みやすい評価コメントの文章に整形させる、という使い方であれば、ChatGPT・Gemini・Microsoft 365 Copilotのいずれかを既に契約している企業なら、新しいツールを追加契約せずに実現できます。
重要なのは、AIに任せるのはあくまで「文章化」という工程までで、何を評価するか(事実の把握)と、最終的にどう評価するか(評価の判断)は、これまでどおり人が行うという前提です。次の章では、AIに渡す前提として、評価コメントとしてそもそもどう書くのが望ましいのかという型を整理します。
2. 良い評価コメントの型 ― 事実・数字・具体的行動の3点セット

評価コメントの書き方については、複数の人事系メディアで共通して示されている型があります。それは、「事実」「数字」「具体的行動」の3点セットで書くというものです。
例えば「営業として頑張っていた」という主観的な一文だけでは、評価される側にとって何が評価されたのか伝わりません。これを「上期は新規顧客の受注を8件獲得し、目標比120%を達成した(数字)。特に既存の提案資料を業種別にカスタマイズする施策を自主的に実施し(具体的行動)、初回商談からの成約率が向上した(事実)」のように、数字と具体的な行動をセットで書くと、評価される側も「何が評価されたのか」を理解しやすくなります。
あわせて、避けるべき表現として複数の人事系メディアが共通して挙げているのが次のような内容です。
- 性格・人柄・身体的特徴への言及(「明るい性格で」「体力があるので」など)
- 同僚との比較(「〇〇さんより優れている」など)
- 事実に基づかない主観的な決めつけ(「やる気が感じられない」など)
特に「情意評価」と呼ばれる勤務態度・意欲などの定性項目は、書き手の主観やバイアスが入り込みやすい領域だと指摘されています。事実・数字・具体的行動に基づかない印象論だけのコメントは、評価される側の納得感を下げるだけでなく、評価者間でのばらつきの原因にもなります。
この「事実・数字・具体的行動」という型は、そのままAIへの指示(プロンプト)の設計にも使えます。次の章では、この型を前提に、どのツールで、どう指示すればよいかを見ていきます。
3. 使うツールを選ぶ ― ChatGPT・Gemini・Copilotの料金と、ChatGPTのデータ方針(要最新確認)
評価コメントの下書きに使えるツールとして、中小企業が契約している可能性が高いのが次の3系統です。それぞれの料金・データの扱いを、公表されている範囲で整理します。料金・機能は変更されることが多い領域のため、契約前に必ず各社公式サイトで最新情報を確認してください。
ChatGPT(Business)
2025年8月29日付で、法人向けプラン「ChatGPT Team」は「ChatGPT Business」に名称変更されました。料金については、OpenAI公式の料金ページは執筆時点で直接確認できなかったため、第三者の解説記事(madewell.ai)の記載に基づくと、Standardシートが月額20ドル(年払い)または25ドル(月払い)とされています(2026年4月時点の情報)。上位シートの料金体系や最低契約シート数については、本記事で確認できた出典に記載がないため記載していません。ドル建てのため、日本円での実質負担額は為替レートによって変動しますし、最新の料金・シート構成は公式ページで確認してください。ChatGPT Business・Enterpriseは、既定ではビジネスデータをモデルの学習に利用しない方針とされていますが、これもOpenAI公式ヘルプセンターの記載と業界解説の整合から確認した情報であり、契約プランごとの正確な設定は契約前に公式サイト・管理画面で必ず確認してください。
Gemini(Google Workspace)
Google Workspaceは2025年3月17日より、Business Starter・Standard・Plusの各プランにGeminiを追加料金なしで標準搭載しました。報道されている新月額(ユーザーあたり)は、Business Starterが800円(改定前680円)、Business Standardが1,600円(改定前1,360円)、Business Plusが2,500円(改定前2,040円)です。ただしBusiness StarterはGemini機能に制限があり、Gemini Advancedを含むフル機能が使えるのはBusiness Standard・Plus以上とされています。この価格は2025年3月時点の情報であり、2026年9月現在までに追加の改定があったかどうかは本記事では未確認です。最新価格は必ずGoogle Workspace公式サイトでご確認ください。
Microsoft 365 Copilot(Word等)
Microsoft 365 Copilotは単体では購入できず、既存のMicrosoft 365ライセンスに追加する「アドオン」として提供されています。中小企業向けには2025年12月に新設された「Copilot Business」というアドオンプラン(〜300ユーザー)があり、QESブログの解説(2026年6月17日時点の情報)によると月額は約3,148円/ユーザー(年間契約)とされています。プラン構成や料金は改定が続いている領域のため、正確な内容は必ずMicrosoft公式のCopilot料金ページでご確認ください。機能面では、WordやExcel、Outlookに組み込まれたCopilotが文章の下書き・校正・トーン調整・要約に対応すると公式サポートページで案内されており、評価コメントのように「事実を分かりやすい文章に整える」用途にも使えると考えられます(この用途評価は本記事の見解です)。一方で同じ公式サポートページでは、数値や固有名詞の誤りが含まれうること、機密情報・個人情報の入力に注意が必要なことも明記されています。
3つのツールはいずれも「事実の箇条書きを文章に整える」という今回の用途では大きな違いはありません。すでに自社が契約しているツールをそのまま使うのが現実的です。次の章では、この3ツールに共通して使える、評価コメント下書き用のプロンプト例を紹介します。
4. 【コピペOK】評価コメントのたたき台を作るプロンプト3パターン

ここから紹介するプロンプトは、ChatGPT・Gemini・Microsoft 365 Copilot(Word)のいずれでもそのまま使えます。〔 〕で囲んだ部分はご自身の状況に合わせて書き換えてください。評価対象者の氏名や、個人を特定できる具体的な経歴・部署名などの情報は入力せず、「対象者A」のような仮の表記に置き換えたうえで使うことを前提にしています(理由は5章で説明します)。
① 事実ベースの実績を評価コメント文章に変換する(上司記入用)
あなたは評価者(上司)をサポートするアシスタントです。以下の事実ベースの箇条書きをもとに、 人事考課の評価コメント文章の下書きを作成してください。 評価対象:〔例:対象者A、営業職〕 評価期間:〔例:2026年上期〕 実績・行動の事実(箇条書き): 〔例:新規顧客受注8件(目標比120%)、提案資料を業種別にカスタマイズする施策を自主的に実施、 初回商談からの成約率が前期比で向上、月次の進捗報告を期限内に提出 など。数字と行動を分けて書く〕 評価の観点:〔例:業績目標の達成度、主体性、チーム貢献 など自社の評価基準〕 条件: ・「事実」「数字」「具体的行動」の3点セットで文章化する ・箇条書きにない内容を推測・断定しない ・性格や人柄への言及、同僚との比較は行わない ・「思う」「感じた」といった主観的な表現ではなく、事実を根拠とした記述にする ・200〜300字程度で、評価シートにそのまま貼り付けられる文章にする
出力イメージ(例)(上記の箇条書きを渡した場合の出力例)
〔評価期間〕は新規顧客の受注を8件獲得し、目標比120%を達成した。提案資料を業種別にカスタマイズする施策を自主的に実施し、初回商談からの成約率向上につなげた。月次の進捗報告も期限内に提出を継続しており、業績目標の達成度・主体性の両面で着実な成果が見られる。
出力されたコメントは、あくまで評価シートに書き込む前の下書きです。箇条書きに書かれていない実績をAIが補ってしまっていないか、数字に誤りがないかを、送信・記録前に必ず人の目で確認してください。
② 良い点と改善点をバランスよく整理する
あなたは評価者(上司)をサポートするアシスタントです。以下の事実ベースの箇条書きをもとに、 「良い点」と「改善点(今後期待すること)」をバランスよく含む評価コメントの下書きを作成してください。 評価対象:〔例:対象者B、事務職〕 評価期間:〔例:2026年上期〕 良い点の事実(箇条書き):〔例:マニュアル未整備だった経費精算フローを自主的に整理し、チームで共有〕 改善点の事実(箇条書き):〔例:締切直前の提出が複数回あった、進捗の共有が期の途中でやや少なかった〕 評価の観点:〔自社の評価基準〕 条件: ・「良い点」と「改善点」を見出しで分けて書く ・改善点は、事実に基づいて「今後どう変わることを期待するか」まで前向きな言葉で書く ・性格や人柄への断定的な評価(「怠慢」「やる気がない」等)は使わない ・改善点も、行動の事実を根拠に具体的に書く(抽象的な精神論にしない)
良い点だけ、あるいは改善点だけに偏ったコメントは、評価される側の納得感を下げやすいと言われています。このプロンプトでは、あらかじめ「良い点」と「改善点」の事実を分けて渡すことで、AIにバランスよく整理させます。改善点についても「〇〇という事実があったので、今後は△△を期待する」という、事実起点かつ前向きな書き方になるよう条件で指定しているのがポイントです。
③ 自己評価(本人が書く一人称視点)のたたき台を作る
あなたは、これから自己評価シートを記入する本人をサポートするアシスタントです。 以下の事実ベースの箇条書きをもとに、一人称視点の自己評価コメントの下書きを作成してください。 評価期間:〔例:2026年上期〕 取り組んだ業務・実績の事実(箇条書き):〔例:新規案件を3件担当、うち1件は当初想定より早く完了、 社内勉強会を月1回企画・運営 など〕 今後取り組みたいこと:〔箇条書きで。任意〕 条件: ・「私は」で始まる一人称視点で書く ・事実に基づいて、成果・工夫した点を具体的に書く ・謙遜しすぎず、かといって誇張もしない、等身大のトーンにする ・箇条書きにない実績を新たに作り出さない ・250〜350字程度でまとめる
自己評価は、評価される本人が使う場面を想定したプロンプトです。管理職だけでなく、一般社員が自分の実績を棚卸しして文章化する際の下書き役としても使えます。こちらも、AIが事実にない実績を書き足していないかを、提出前に本人が必ず確認することが前提です。
5. 使う前に確認しておきたい注意点 ― 個人情報の扱いと最終判断

評価コメントの下書きにAIを使う際は、次の2点を必ず押さえておいてください。
① 実名・個人を特定できる情報は仮名化してから入力する
個人情報保護委員会は2023年6月2日付で「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」を公表しており、個人情報取扱事業者が生成AIサービスに個人情報を含むプロンプトを入力する場合、その利用が特定された利用目的の達成に必要な範囲内であることを十分に確認することなどを求めています。評価コメントには、実績や行動といった業務上の事実だけでなく、意図せず個人を特定できる情報(氏名、所属部署の詳細、担当していた具体的な顧客名など)が混ざり込みやすいため、4章のプロンプトのように「対象者A」といった仮の表記に置き換えてから入力する運用をおすすめします。なお、生成AIに個人情報を入力する際のリスクや対策については、当サイトの関連記事でも詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
また、契約しているツールが入力データを機械学習に利用しない設定になっているかどうかは、ツールやプランによって扱いが異なります。3章で触れたとおり、ChatGPT Business・Enterpriseは既定でビジネスデータを学習に利用しない方針とされていますが、これは無料版ChatGPTには当てはまりません。Gemini(Google Workspace)やMicrosoft 365 Copilotなど、法人契約でのデータの扱いについても、各社の公式情報と自社の管理設定で必ず確認してください。組織で使う場合は、情報システム部門・管理者にも確認することをおすすめします。
② 最終的な評価・承認の判断は必ず人が行う
AIが作成するのは、あくまで事実を文章に整えた「下書き」です。評価そのもの、つまり「この実績・行動をどう評価するか」という判断は、これまでどおり評価者と組織が行うべきものであり、AIに委ねるべきではありません。出力された文章に事実誤認や誇張がないか、3点セット(事実・数字・具体的行動)から外れた主観的な言い回しが混ざっていないかを、評価シートに記入・提出する前に必ず人の目で確認する運用にしてください。
6. 明日から始めるための3つのアクション
① 評価対象者ごとに「事実の箇条書き」を先に用意する
AIに評価コメントを書かせる前に、評価期間中の実績・行動を箇条書きで手元にメモしておく習慣をつけると、4章のプロンプトにそのまま流用できます。日頃から進捗メモや1on1の記録を箇条書きで残しておくと、評価シーズンの負担がさらに軽くなります。
② まずは1〜2名分で試し、所要時間を比べる
全員分を一気にAI活用に切り替えるのではなく、まずは1〜2名分の評価コメントで試し、これまでの所要時間とAI活用後の所要時間を比べてみてください。あわせて、出力された文章が実際の評価シートにそのまま使えるレベルか、どの程度手直しが必要だったかもメモしておくと、次回以降のプロンプトの改善につながります。
③ 社内の運用ルールを簡単に共有する
次の3行を、チャットツールや共有ドキュメントにそのまま貼り付けて、評価者間で認識を揃えてください。
- 評価対象者の氏名や個人を特定できる情報は、仮の記号(対象者Aなど)に置き換えてから入力する
- AIが作った評価コメントは「下書き」として扱い、提出前に必ず事実誤認がないか人が確認する
- 評価そのものの判断はAIに委ねず、必ず評価者・組織が行う
まとめ
評価シーズンの評価コメント作成は、事実そのものよりも「文章に整える」作業に時間がかかりがちです。ChatGPT・Gemini・Microsoft 365 Copilotのいずれかをすでに契約している企業であれば、新しいツールを追加契約せずに、この文章化の工程を助ける下書き役として活用できます。
- 良い評価コメントの型:「事実」「数字」「具体的行動」の3点セットで書き、性格や人柄への言及・同僚との比較・主観的な決めつけは避ける
- ツール選定:すでに契約しているChatGPT(Business)・Gemini(Google Workspace)・Microsoft 365 Copilotのいずれでも今回の用途は実現できる。料金・データの扱いはプランごとに異なるため、契約前に必ず公式サイトで最新情報を確認する
- コピペで使えるプロンプト:①上司記入用の実績→評価コメント文章化、②良い点・改善点をバランスよく整理、③本人が書く自己評価のたたき台、の3パターン
- 使う前の注意点:評価対象者の氏名など個人を特定できる情報は仮名化してから入力する。AIが作るのはあくまで下書きであり、評価そのものの判断は必ず人が行う
まずは1〜2名分の評価コメントで、事実の箇条書きを用意してプロンプト①を試してみてください。小さく試して所要時間や使い勝手を確かめれば、評価シーズンごとに繰り返す作業の負担を、着実に減らしていけるはずです。
出典・参考
- OpenAI Help Center「ChatGPT Business Rename FAQ」https://help.openai.com/en/articles/12111915-chatgpt-business-rename-faq (ChatGPT TeamからChatGPT Businessへの名称変更、2025年8月29日付。本調査では403エラーで本文は直接確認できず)
- OpenAI「Introducing ChatGPT Team」https://openai.com/index/introducing-chatgpt-team/ (2024年発表時点の参考リンク。403エラーのため本調査では内容未確認。現在の料金の根拠としては使用していない)
- madewell.ai「ChatGPT Team is now ChatGPT Business」解説記事 https://www.madewell.ai/blog/chatgpt-team-now-business (Standardシート月額20ドル・年払い/25ドル・月払い、2026年4月時点の情報として記載。本文の料金記載の主な根拠)
- PC Watch「Google Workspace、追加料金なしでGemini利用可能に。ただし3月から値上げ」https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1654889.html (2025年3月17日付の価格改定情報。第三者報道)
- QESブログ「【2026年最新】Microsoft 365 Copilot & Cowork ライセンス完全ガイド:プランの選び方と料金体系を徹底解説」https://www.qes.co.jp/media/microsoft/m365copilot/a991 (中小企業向け「Copilot Business」アドオンの月額約3,148円/ユーザー等、2026年6月17日時点の情報。一社の解説記事のため参考情報として扱い、正確な料金はMicrosoft公式ページで確認)
- Microsoft公式Copilot料金ページ https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365-copilot/pricing
- Microsoft Support「Wordの Copilot へようこそ」https://support.microsoft.com/ja-jp/office/word-%E3%81%AE-copilot-%E3%81%B8%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%93%E3%81%9D-2135e85f-a467-463b-b2f0-c51a46d625d1
- 個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(2023年6月2日公表)https://www.ppc.go.jp/news/careful_information/230602_AI_utilize_alert/ (PDF一次資料: https://www.ppc.go.jp/files/pdf/230602_alert_generative_AI_service.pdf )
- カオナビ人事用語集「人事評価・考課コメントと自己評価の例文を職種別に紹介!書き方のポイントも解説」https://www.kaonavi.jp/dictionary/how-to-write-comments/

