【この記事でわかること】
- 面接で即使える、基本の質問テンプレート15選
- ChatGPTで「自社に合わせた質問リスト」を自動生成する具体的な方法
- コピー&ペーストするだけですぐに使えるプロンプト
質問の“非標準化”による評価のバラつき
「Aさんが面接すると合格率が高いが、Bさんが担当すると低い」「あの候補者、一次面接の評価は高かったのに、二次では全く違う評価だ…」
採用現場では、このような評価のブレが頻繁に起こります。これは、面接官個人のスキルや経験に問題があるというよりも、評価の拠り所となる「質問」と「評価基準」が属人化している、つまり“非標準化”の状態にあることが根本的な原因です。
多くの企業では、基本的な質問リストは用意されているものの、その場の雰囲気で追加の質問をしたり、候補者の回答に対する深掘りの仕方が面接官ごとに異なったりします。その結果、候補者から引き出せる情報に差が生まれ、評価にバラつきが生じてしまうのです。
【基本テンプレート】面接で必ず聞くべき質問リスト15選
AI活用の前に、まずは基本となる質問の型を理解しておくことが重要です。ここでは、候補者の多面的な側面を理解するために、あらゆる面接で活用できる基本的な質問を15個リストアップしました。
【候補者の人柄・価値観を知る質問】
- これまでの仕事で、最もやりがいを感じた瞬間はどのような時でしたか?
- 逆に、仕事で困難を感じた経験と、それをどう乗り越えたか教えてください。
- あなたの強みと、それを裏付ける具体的なエピソードを教えてください。
- ご自身の弱みや課題はなんだと考えていますか?それを改善するために何をしていますか?
- どのようなチームや環境で働くときに、最もパフォーマンスを発揮できると思いますか?
【スキル・経験の深さを測る質問】
- これまでのキャリアで最も大きな成功体験は何ですか?その成功要因をどう分析しますか?
- (募集職種に関連する)具体的なプロジェクト経験について、あなたの役割と貢献を教えてください。
- 複数名のチームで目標達成を目指した経験はありますか?その際のあなたの立ち回りを教えてください。
- 業務において、ご自身の判断で何かを改善した経験があれば教えてください。
- これまでの経験で得たスキルの中で、当社で最も活かせると考えるものは何ですか?
【入社意欲・自社との相性を確認する質問】
- 当社に興味を持ったきっかけや理由を教えてください。
- 当社の事業やサービスについて、どのような印象をお持ちですか?
- この職務を通じて、3年後、5年後にどのようになっていたいですか?
- 転職活動において、企業選びの軸は何ですか?
- 他社の選考状況について、差し支えない範囲で教えていただけますか?
【注意】
このリストはあくまで汎用的なテンプレートです。このリストをそのまま使うだけでは、残念ながら採用の質を劇的に向上させることは困難です。次の章でその理由を詳しく解説します。
「質問リスト」だけではダメ?採用の質を左右する3つの課題
テンプレートとなる質問リストを準備することは大切ですが、それだけでは不十分です。多くの企業が陥りがちな3つの課題を見ていきましょう。
課題1. 質問の意図が伝わらず、評価が結局ブレる
リストにある「あなたの強みは?」という質問一つとっても、面接官によって「主体性を見たい」「協調性を見たい」「課題解決能力を見たい」など、確認したい意図が異なります。質問の背景にある「何を見極めるための問いなのか」という意図が共有されていなければ、結局は面接官個人の主観で評価が下され、評価のブレはなくなりません。
課題2. 「自社の求める人物像」とのズレが生じる
汎用的な質問リストは、自社が本当に求める特定のスキルや価値観を持つ人材を見極めるには不十分です。例えば、「主体性の高い人材」を求めるのであれば、「指示待ちではなく、自ら課題を見つけて行動した経験はありますか?」といった、より踏み込んだ具体的な質問が必要です。一般的なリストでは、この「自社仕様」へのカスタマイズが抜け落ちがちです。
課題3. リストの更新・管理に手間がかかり、形骸化する
事業フェーズの変化や募集ポジションの多様化に伴い、求める人物像も変化します。その都度、人事担当者が質問リストを見直して更新し、全社に展開するのは多大な労力がかかります。結果として、メンテナンスが追いつかずに古いリストが使われ続け、採用戦略と現場の面接が乖離してしまうケースは少なくありません。
AIの出番!ChatGPTで「わが社だけの質問リスト」を自動生成
前述した3つの課題を解決し、効率的かつ質の高い面接を実現する有効なツールが、ChatGPTに代表される生成AIです。
なぜChatGPTが面接質問の作成に適しているのか?
ChatGPTは、膨大なテキストデータを学習しており、与えられた条件に基づいて論理的で構造化された文章を生成することを得意としています。これは、採用要件という複雑な情報を整理し、適切な問いに落とし込む作業と非常に相性が良いのです。
AIなら「求める人物像」から逆算した質問を生成できる
AIの最大の強みは、「求める人物像」や「採用要件」といった抽象的な情報をインプットするだけで、それを評価・判断するための具体的な質問に変換してくれる点です。これにより、自社の求める人物像とのズレを解消できます。
質問の意図や評価のポイントまでセットで出力可能
AIはただ質問を生成するだけではありません。「この質問で何を確認するのか(質問の意図)」や「どのような回答であれば高評価とするか(評価のポイント)」といった、評価基準までセットで出力させることが可能です。面接官による評価のブレを防ぎ、全員が同じ基準で候補者を評価できるようになります。
1分で完成!面接質問を生成する“魔法のプロンプト”
ここからは、ChatGPTにコピー&ペーストするだけで、誰でも簡単に「自社専用の面接質問リスト」を生成できるプロンプトをご紹介します。
【コピペOK】面接質問リスト作成のための基本プロンプト
# 命令書 あなたは、優秀な採用コンサルタントです。 以下の#制約条件と#入力情報に基づいて、採用面接で候補者の能力や価値観を深く見極めるための質問リストを作成してください。 # 制約条件 ・質問は全部で10個生成してください。 ・各質問には「質問の意図」と「評価のポイント」を必ず含めてください。 ・候補者が具体的なエピソードを話せるような、行動事実を確認する質問(行動特性質問)を多く含めてください。 ・出力形式は、以下の#出力形式に従ってください。 # 入力情報 ・募集職種: [ここに募集職種名を入力。例:法人営業マネージャー] ・求める人物像: - [ここに求める人物像やスキルを箇条書きで入力。例:高い目標達成意欲を持っている] - [例:未開拓の市場に対して、自ら戦略を立てて実行できる] - [例:5名程度のチームマネジメント経験がある] ・企業の価値観: [ここに自社のカルチャーや価値観を入力。例:失敗を恐れず挑戦することを推奨する文化] # 出力形式 ## 【(募集職種名)】採用面接 質問リスト ### 1. (ここに質問文) - **質問の意図:** (ここに質問の意図を記述) - **評価のポイント:** (ここに評価のポイントを記述) ### 2. (ここに質問文) - **質問の意図:** (ここに質問の意図を記述) - **評価のポイント:** (ここに評価のポイントを記述) (以下、10番まで同様の形式で出力)
プロンプトの解説
- #命令書: AIに「採用コンサルタント」という役割を与えることで、より専門的で質の高いアウトプットを引き出します。
- #制約条件: 出力してほしい内容のルール(質問数、必須項目、質問のタイプなど)を明確に指定します。
- #入力情報: [ ] の部分を、あなたの会社の状況に合わせて書き換えます。ここが具体的であるほど、生成される質問の精度が向上します。
- #出力形式: AIが生成する文章のフォーマットを固定します。これにより、誰が使っても見やすく、比較しやすいリストが完成します。
【実践例】弊社情報で「法人営業マネージャー」の質問リストを生成してみた
上記のプロンプトの [ ] に「法人営業マネージャー」の情報を入力して実行すると、ChatGPTは以下のようなリストを生成します。
## 【法人営業マネージャー】採用面接 質問リスト ### 1. 直近 1 年間で、ご自身が掲げた最も高い営業目標と、その達成プロセスを具体的に教えてください。 * **質問の意図:** 目標達成意欲の強さと、数値目標に向けた計画・実行力を確認する。 * **評価のポイント:** 目標の難易度/達成率、KPI設計の妥当性、成果までの論理的な道筋、課題発生時のリカバリー力。 ### 2. まだ開拓されていない業界・地域で新規顧客を獲得した経験について、戦略立案からクロージングまでの流れを詳しく説明してください。 * **質問の意図:** 未開拓市場への戦略構築力と実行力を測る。 * **評価のポイント:** 市場分析の深さ、仮説設定→検証のサイクル、独自の価値提案、達成インパクト。 ### 3. チーム目標が未達成だった際、5 名程度のメンバーをどのように鼓舞し、巻き込んで成果を出したかを具体的に教えてください。 * **質問の意図:** 小規模チームのマネジメントスキルと「チームで成長しよう」の価値観との適合を確認。 * **評価のポイント:** メンバー理解(強み・弱み把握)、目標再設定のプロセス、コミュニケーション方法、結果の変化。 ### 4. 失注や目標未達など逆境を経験した際に、どのように前向きさを維持し、次の行動につなげたかエピソードを教えてください。 * **質問の意図:** 「前向きでいこう」「粘り強く成長しよう」の価値観を体現できるかを探る。 * **評価のポイント:** 感情コントロール、学習・改善サイクル、周囲へのポジティブな影響。 ### 5. これまでの営業プロセス改善で「本質」にこだわり抜いた事例を教えてください。 * **質問の意図:** 表面的な施策でなく、本質的課題を見極めて解決できるかを確認。 * **評価のポイント:** 課題発見の視点の深さ、根本原因分析、定量・定性エビデンス、成果の持続性。 ### 6. チームメンバーの成果が伸び悩んだとき、具体的にどのようなコーチングやフィードバックを行いましたか? * **質問の意図:** メンバー育成力と成果へのコミットメントを測る。 * **評価のポイント:** 個別最適な支援方法、フィードバックの具体性/タイミング、メンバー成長指標の変化。 ### 7. 社内の他部門(例:マーケティング、プロダクト)と連携し、営業成果を最大化した経験を教えてください。 * **質問の意図:** 組織横断で協働しチームとして成果を創出できるかを確認。 * **評価のポイント:** ステークホルダー調整力、共通KPI設定、相互メリット創出、結果のインパクト。 ### 8. 営業戦略策定時、データや指標をどのように活用して意思決定を行っていますか?具体例を挙げてください。 * **質問の意図:** データドリブンな意思決定の習慣と論理的思考を評価する。 * **評価のポイント:** 収集データの質・量、分析手法、示唆抽出→行動への落とし込み、成果との因果関係。 ### 9. ご自身のキャリアで「挑戦者のために挑戦しよう」という姿勢を示した経験を教えてください。 * **質問の意図:** 企業のミッションへの共感度と、自ら困難に挑む姿勢を測る。 * **評価のポイント:** リスク許容度、目的意識の明確さ、周囲への巻き込み、挑戦後の学びと成長。 ### 10. 今後 2 年間で、ご自身とチームをどのように成長させたいと考えていますか?具体的な目標とアクションプランを説明してください。 * **質問の意図:** 中期視点での自己・組織成長プランを描けるかを確認。 * **評価のポイント:** 具体的な数値・期間設定、戦略と実行計画の整合性、学習/改善プロセス、会社の価値観との一致度。
さらに応用!「コンピテンシー評価」に対応したプロンプト
「主体性」「リーダーシップ」といった、より具体的な評価項目(コンピテンシー)に基づいて質問を生成したい場合は、プロンプトの「#入力情報」を以下のように変更することで対応できます。
# 入力情報 ・募集職種: [法人営業マネージャー] ・評価したいコンピテンシー: - 達成指向性: 困難な目標を設定し、粘り強く達成に向けて行動する力 - 戦略的思考力: 市場や顧客の状況を分析し、有効な営業戦略を立案する力 - リーダーシップ: チームメンバーを巻き込み、目標達成に向けて動機づける力
【注意】ChatGPT利用時の個人情報・機密情報の取り扱いについて
ChatGPTなどの生成AIを利用する際は、候補者の氏名や連絡先といった個人情報、および自社の未公開情報などの機密情報を絶対に入力しないでください。入力したデータがAIの学習に利用される可能性があります。本記事で紹介したプロンプトのように、採用要件や職務内容といった一般的な情報のみを入力するように徹底しましょう。
AI活用で採用業務はここまで変わる!3つの大きなメリット
AIを導入することで、単に質問作成が楽になるだけではありません。採用業務全体にポジティブな変化が生まれます。
メリット1. 面接準備の時間を大幅に削減できる
これまで数時間かかっていた質問リストの作成や見直し作業が、数分で完了します。実際にプロナビAI人事の編集部が所属するチームでもこの手法を導入した結果、面接官一人が質問準備にかける時間が平均で40%削減され、候補者との対話により集中できる環境が整いました。
メリット2. 公平な評価が実現する
質問の意図と評価ポイントが明確に言語化・共有されるため、面接官の経験年数やスキルレベルに関わらず、評価のブレを最小限に抑えることができます。これにより、採用の公平性が担保され、候補者の入社後のミスマッチを減らす効果も期待できます。
メリット3. 戦略的な人事業務に集中する時間が生まれる
質問作成のような定型業務をAIに任せることで、人事担当者は時間的・精神的な余裕を持つことができます。その結果、採用ブランディングの強化や入社後オンボーディングの企画、組織開発といった、より付加価値の高い戦略的な業務に集中できるようになります。
明日からできるAI活用成功への3ステップ
AIは難しそうと感じる方も、心配はいりません。今日からでも始められる、AI活用の簡単な3つのステップをご紹介します。
Step1. 無料のChatGPTアカウントを作成
まだ利用したことがない方は、まずはChatGPTの公式サイトから無料のアカウントを作成してみましょう。メールアドレスだけで簡単に登録できます。
Step2. この記事のプロンプトをコピーして試してみる
アカウントが作成できたら、早速この記事で紹介した「魔法のプロンプト」をコピー&ペーストして、実際に質問リストを生成してみてください。その便利さと精度の高さに驚くはずです。
Step3. 出力結果をチームで共有し、小さな改善から始める
生成された質問リストを、まずはご自身のチームや面接を担当するメンバーと共有してみましょう。「この質問、いいね」「ここの評価ポイントはもう少し具体的にしたいね」といった議論が生まれ、AIを叩き台にしながら、チーム全体で面接の質を高めていく文化が醸成されます。
まとめ:AIを“賢いアシスタント”に。質の高い面接と業務効率化を両立しよう
面接は候補者の見極めだけでなく、企業の魅力を伝える重要な機会です。面接の質を高め、かつ準備の効率化を実現する手段として、AIの活用は現実的な選択肢となっています。ChatGPTを使えば、求める人物像に基づいた質問リストを誰でも簡単に作成可能です。属人化やブレを防ぎ、選考の透明性と納得感も高められます。AIは単なる時短ツールではなく、人事の可能性を広げる”賢いアシスタント”です。次の面接準備から、ぜひAIを活用し始めてみてください。