【この記事でわかること】
- 候補者体験を向上させる、選考結果通知の基本マナーと例文
- AI(ChatGPT)を活用して通知メール作成を80%効率化する新常識
- コピペしてすぐに使える、合格・不合格通知用の「神プロンプト」
なぜ選考結果の通知はこんなに大変なのか?3つの理由
選考結果の通知は、多くの人事担当者にとって精神的にも手間の面でも負担の大きい業務です。その背景には、いくつかの共通した要因があります。ここでは、業務が重く感じられる理由を3つに分けて整理してみましょう。
1. 個別最適化した文面調整に時間がかかる
テンプレートを使いつつも、応募してくれた感謝や、面接での好印象だった点などを一言添えるなど、一人ひとりに合わせて文面を微調整するのは思いのほか時間がかかります。特に応募者が多い場合、この「少しの調整」が積み重なり、1日数時間の作業になることも珍しくありません。
2. 不採用を伝える心理的負担
最も大きな負担は、不採用を伝える際の心理的なストレスです。 企業の将来を担うかもしれない人材に対し、不合格を言い渡すことへの申し訳なさや心苦しさは、経験を積んだ人事担当者であっても感じるものです。この精神的な疲労が、業務全体のパフォーマンスを低下させる一因にもなり得ます。
3. 企業評価を左右する候補者体験
選考結果の通知は、候補者が企業と接する最後のコミュニケーションになる可能性があります。ここで不誠実な対応をしてしまうと、「サイレントお祈りされた」「冷たいメールだった」といったネガティブな口コミが広がり、企業の評判を損なうリスクがあります。候補者体験は、採用ブランディングにおいて極めて重要な要素なのです。
押さえておきたい選考結果通知の鉄則
AIを活用する前に、まずは人事のプロとして押さえておくべき基本マナーを再確認しましょう。この土台があるからこそ、AIが生成した文章を適切に判断し、活用することができます。
通知のタイミングは「約束した期日+3営業日以内」が理想
面接時に「1週間以内にご連絡します」と伝えたなら、必ずその期日内に連絡するのが鉄則です。もし選考が長引きそうな場合は、期日前に一度、選考状況を連絡する中間報告を入れると丁寧な印象を与えられます。一般的には、最終面接後であれば3〜5営業日以内に通知するのが望ましいでしょう。
【例文あり】合格・不合格それぞれの基本構成とポイント
通知メールは、以下の要素を含んで構成するのが基本です。
合格通知の基本構成
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件名:選考結果のご連絡であることが一目でわかるように
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宛名:会社名・氏名を正確に
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挨拶と応募への感謝
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選考結果:合格である旨を明確に伝える
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今後の流れ:入社手続きや次のステップについて案内
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締め:署名・連絡先
不採用通知(お祈りメール)の基本構成と例文
不採用通知で最も重要なのは、感謝と誠実さです。 事務的な文面だけでなく、応募してくれたことへの感謝を丁寧に伝えましょう。
件名:【株式会社プロナビ】選考結果のご連絡
[候補者氏名]様 この度は、弊社の「[募集ポジション名]」にご応募いただき、また先日はお忙しい中、面接にお越しいただき、誠にありがとうございました。
[候補者氏名]様との面接を通じ、これまでのご経験やスキルに大変魅力を感じましたが、社内で慎重に検討を重ねました結果、誠に残念ながら、今回はご期待に沿いかねる結果となりました。 ご期待に沿えず大変申し訳ございませんが、何卒ご了承くださいますようお願い申し上げます。
末筆ではございますが、[候補者氏名]様の今後のご健勝とご活躍を心よりお祈り申し上げます。
--- 株式会社プロナビ 人事部 採用担当 [担当者名] [連絡先・住所など] ---
やってはいけないNG対応
候補者からの信頼を最も失う行為が、いわゆる「サイレントお祈り(連絡をしないこと)」です。これは候補者の時間を無駄にするだけでなく、企業のブランドを著しく毀損します。必ず何らかの形で、すべての候補者に結果を通知しましょう。また、通知が大幅に遅れることや、画一的で冷たい印象の文面だけで済ませることも、同様に注意が必要です。
【本題】その通知業務、AIで最大80%の効率化も可能に
これまで多くの人事担当者が行ってきた「テンプレート探し」や「手作業での微調整」といった通知業務は、AIの登場によって大きく変わりつつあります。定型業務の負担を軽減しつつ、候補者ごとに適切な対応ができる、新たな手段として注目されています。
「テンプレート探し」から「AIによる文面生成」へ
これまでの選考通知は、Webで汎用的なテンプレートを探し、自社の状況に合わせて手作業で修正することが一般的でした。これからは、AIに「自社の状況」と「伝えたいニュアンス」を指示し、最適な文面をその場で生成させる時代です。 毎回ゼロから考える手間や、テンプレートを探し回る時間はもう必要ありません。
必要なのはChatGPTだけ!今日から無料で始められます
AI導入は難しそうと感じる必要はありません。本記事で紹介する方法は、多くの人が利用しているChatGPT(無料版で十分です)だけで実践できるため、。特別なツールや専門知識は不要です。この記事を読み終えた瞬間から、通知業務の変化を感じられるはずです。
コピペでOK!選考結果通知メールをAIで作成する“神”プロンプト
ここからは、実際にChatGPTにコピー&ペーストして使える「プロンプト(指示文)」をご紹介します。プロンプトは、AIに質の高い仕事をしてもらうための「魔法の呪文」のようなものです。
基本の「不採用通知」プロンプト
まずは、丁寧かつ誠実な不採用通知メールを作成する基本のプロンプトです。[ ] の部分をあなたの状況に合わせて書き換えて、ChatGPTに送信してください。
#役割 あなたは、BtoB SaaS企業の人事部で採用を担当するプロフェッショナルです。候補者体験(CX)を非常に重視しており、丁寧かつ誠実なコミュニケーションを心がけています。 #指示 以下の候補者情報と選考状況に基づき、丁寧な不採用通知メール(お祈りメール)の文案を3パターン作成してください。 #候補者情報 - 氏名: [候補者氏名]様 - 応募ポジション: [募集ポジション名] - 選考フェーズ: [最終面接] #盛り込みたい要素 - 応募と面接に来てくれたことへの感謝を伝える。 - 候補者の経歴や面接での人柄に魅力を感じたが、今回はポジションとのフィットを考慮し、やむなく不採用となったニュアンスを伝える。 - 事務的で冷たい印象を与えない、人間味のある言葉を選ぶ。 - 会社の基本情報は以下の通りです。 - 会社名: 株式会社プロナビ - 担当者: 人事部 採用担当 [担当者名] - 候補者の今後の活躍を心から願う一文で締めくくる。 #出力形式 - 件名 - 本文
AIからの出力例と、微調整のコツ
上記のプロンプトを入力すると、AIは以下のような複数の文案を提案してくれます。
【出力例】
パターン1:スタンダード
件名:【株式会社プロナビ】選考結果のご連絡
[候補者氏名]様 先日はお忙しい中、最終面接にお越しいただき、誠にありがとうございました。 慎重に選考を重ねました結果、誠に残念ながら、今回はご期待に沿いかねる結果となりました。.....
気に入ったものを選び、必要に応じて「もう少し柔らかい表現にしてください」「面接で伺った〇〇の経験は素晴らしかった、という一文を加えてください」のように、人間と会話するように追加で指示を出すことで、さらに文面の質を高めることができます。
【応用編】「次の選考への期待感」を匂わせるプロンプト
「今回は不採用だが、別のポジションなら可能性がある」といった優秀な候補者には、以下の要素をプロンプトに追記します。
#追加の指示 今回は募集ポジションとの専門性の兼ね合いで見送りとなりましたが、[候補者氏名]様のコミュニケーション能力には非常に魅力を感じました。今後、別のポジションで募集があった際に、改めてこちらからお声がけさせていただく可能性があることを、失礼のないように伝えてください。
【応用編】「合格通知」と「入社手続き案内」を同時に作るプロンプト
合格通知もAIに任せましょう。以下のプロンプトで、内定の喜びを伝えつつ、事務手続きまでスムーズに案内できます。
#役割 (基本プロンプトと同様) #指示 以下の候補者情報に基づき、内定(合格)を伝えるお祝いのメールを作成してください。加えて、今後の入社手続きに必要な書類(雇用契約書、身元保証書など)について、別途送付する旨を案内してください。 #候補者情報 - 氏名: [候補者氏名]様 - 応募ポジション: [募集ポジション名] #盛り込みたい要素 - 選考突破のお祝いと、入社を心待ちにしている気持ちを伝える。 - [候補者氏名]様の[面接で印象的だった強み]に期待していることを具体的に言及する。 - 次のステップとして、入社手続きに関する案内を近日中に行うことを伝える。 #出力形式 - 件名 - 本文
AI導入のメリットと、賢く使うための注意点
通知業務にAIを導入することで、単なる時短以上の効果が期待できます。人事担当者が得られる主な3つのメリットをみていきましょう。
1. 年間数十時間の工数削減
たとえば通知メール1通の作成に5分かかっている場合、月に50通送ると月間で250分(約4時間)、年間では約50時間もの工数を削減できる計算になります。 実際、弊社の人事チームではこのプロンプト活用により、通知メールの作成時間を月10時間から2時間へと80%削減することに成功しました。
2. 文面の質の標準化と候補者体験の向上
担当者による文面の質のバラつきがなくなり、常に一定水準以上の丁寧なコミュニケーションが担保されます。どの候補者に対しても公平で誠実な対応が可能になり、候補者体験が向上します。
3. コア業務への注力が可能に
最も大きなメリットは、創出された時間を面接の質の向上や採用戦略の立案など、人にしかできない創造的なコア業務に充てられることです。
【注意点】個人情報の扱いと最終チェックの重要性
AIは非常に便利ですが、万能ではありません。以下の点には必ず注意してください。
個人情報の扱い
ChatGPTなどの外部AIサービスに、候補者の氏名や連絡先といった個人情報を直接入力することは避けるべきです。プロンプトでは「[候補者A]」のように仮名や記号で代替し、生成された文章を自社のメール作成画面に貼り付けた後、正しい情報に書き換える運用を徹底してください。
最終チェックは必ず人間が行う
AIが生成した文章には、誤字脱字や意図しない不自然な表現が含まれている可能性があります。必ず人の目で最終確認を行い、問題がないかチェックしましょう。
まとめ
選考結果の通知は、候補者との最後の接点であり、企業の印象を左右する大切なプロセスです。しかし現実には、手間と精神的負担が大きい業務でもあります。AIを活用することで、通知業務は迅速かつ丁寧に行えるようになり、人事担当者は本来向き合うべきコア業務にリソースを集中できるようになります。本記事でご紹介したのは、AI活用のほんの一例です。定型業務から解放され、人と人とが向き合う時間を取り戻すことで、人事の価値が大きく向上するでしょう。AIを上手に活用し、その可能性を実務の中で体感してみてください。