【この記事でわかること】
- AI(ChatGPT)を活用して、候補者からの問い合わせ対応を効率化する具体的な方法
- 「よくある質問(FAQ)」と「返信メールテンプレート」をAIに自動生成させる3つのステップ
- コピー&ペーストしてすぐに使える、実践的なプロンプト(AIへの指示文)とその出力例
候補者からの問い合わせ対応のよくある課題
日々多くの候補者と接する中で、問い合わせ対応は避けて通れない業務です。しかし、その裏側では多くの人事担当者が共通の悩みを抱えています。ここではよくある課題を4つご紹介しますので、自社の状況と照らし合わせてみて下さい。
定型的な質問への返信に、毎日時間を奪われている
「選考フローについて教えてください」「勤務地はどこですか?」といった定型的な質問に、毎日何度も同じ内容のメールを作成している時間は、決して少なくありません。本来であれば採用戦略の策定や候補者との面談準備に充てたい時間が、こうした単純作業に削られているのが実情です。
担当者によって回答の質やスピードにバラつきがある
問い合わせ対応が特定の担当者に依存し、業務が属人化していないでしょうか。その担当者が不在の際に回答が遅れたり、人によって回答のニュアンスが異なったりすると、候補者に与える印象も変わってしまいます。チーム全体で対応品質を標準化することは、重要な課題の一つです。
対応の遅れにより候補者の心証を損ねていないか不安
多忙を極める中で、問い合わせへの返信が遅れてしまうこともあるかもしれません。スピーディーな対応が求められる現代において、対応の遅れは「候補者体験」を損ない、優秀な人材を惹きつける機会を逃す原因にもなり得ます。
FAQページを作りたいが質問をまとめる時間がない
「よくある質問」をWebサイトにまとめておけば、問い合わせ件数そのものを減らせることは分かっている。しかし、過去のメールを遡って質問を洗い出し、整理して文章を作成する、という作業に着手する時間的な余裕がない、というのもよくある悩みです。
従来の対策だけでは不十分な“根本的な理由”
これらの課題に対し、多くの企業ではメールテンプレートの活用やFAQページの設置といった対策が取られてきました。しかし、それだけでは十分ではないと感じている人事担当者も少なくありません。根本的な解決に至らない理由として、主に以下の3つが挙げられます。
作業の手間が残る
テンプレート集を用意しても、「どの質問にどのテンプレートを使うか」を探し、コピー&ペーストして、宛名を修正するといった作業は依然として残ります。問い合わせの件数が多ければ、この「探して、貼って、修正する」という一連の作業自体が大きな負担となります。
FAQの更新・メンテナンスが続かない
FAQページは、作成して終わりではありません。新しい募集職種が増えたり、社内制度が変わったりするたびに、情報を最新の状態に保つ必要があります。日々の業務に追われる中で、この更新・メンテナンス作業が後回しになり、結果として情報が陳腐化してしまうことは珍しくありません。
属人化から抜け出せない
テンプレートやFAQはあくまで道具であり、それを使って対応するのは「人」です。そのため、担当者のスキルやその時々の状況によって対応品質が左右されるという、属人化の問題は解決されません。根本的な工数削減や品質の標準化を実現するには、この構造そのものを見直す必要があります。
AIの出番!ChatGPTが問い合わせ対応の救世主になる3つの理由
従来の対策が抱える「あと一歩」を埋めてくれるのが、ChatGPTに代表される生成AIです。AIが問い合わせ対応の救世主となり得る理由を3つご紹介します。
1. 24時間365日、即座に高品質な回答を生成できる
AIには勤務時間という概念がありません。候補者が深夜や休日に問い合わせをしてきても、即座に一次回答を返すことが可能です。候補者の疑問を待たせることなく解決し、満足度を向上させられます。
2. 最適な回答を瞬時に見つけ出せる
人間が過去のメール履歴から適切な回答を探すのには時間がかかりますが、AIは違います。事前に学習させた採用情報や過去のQ&Aデータの中から、問い合わせ内容に最も合致する回答を瞬時に見つけ出し、自然な文章で生成します。
3. 業務の標準化が実現する
AIは、設定されたルールやトーン&マナーに沿って、常に一貫した品質の回答を生成します。これにより、担当者による回答のバラつきがなくなり、業務の標準化が実現します。経験の浅いメンバーでも、ベテランと同じレベルの初期対応が可能になるのです。
【コピペOK】ChatGPTで実践!問い合わせ対応を効率化する3ステップ
それでは、具体的にChatGPTを使って問い合わせ対応を効率化する方法を3つのステップで解説していきましょう。AI初心者の方でも迷わないよう、コピー&ペーストしてそのまま使えるプロンプト(AIへの指示文)と、その出力例を掲載します。
STEP1 「よくある質問(FAQ)」をAIにリストアップさせる
最初に、問い合わせ対応の基礎となる「よくある質問(FAQ)」のリストをAIに作成させます。これにより、質問をゼロから洗い出す手間を大幅に削減できます。
【プロンプト例:FAQリストアップ】
# 命令書 あなたは、成長企業の人事担当者です。採用候補者から頻繁に寄せられるであろう質問を網羅的に洗い出し、FAQリストを作成してください。 # 前提条件 ・当社の事業内容:SaaSプロダクトの開発・提供 ・募集中の主な職種:エンジニア、セールス、カスタマーサクセス ・採用ターゲット:20代〜30代の若手・中堅層 ・企業の魅力:フルリモート可、フレックスタイム制、学習支援制度が充実 # 出力形式 以下のカテゴリに分けて、それぞれ5つ以上のQ&A形式でリストアップしてください。 ・選考プロセスについて ・働き方・制度について ・事業・組織について ・募集職種について ・その他 > 【ポイント】 > [前提条件]の部分を貴社の情報に書き換えるだけで、自社に最適化されたFAQリストが簡単に作成できます。
【AIによる出力例(一部抜粋)】
> #### 選考プロセスについて > Q1. 選考プロセスについて教えてください。 > A1. 書類選考→1次面接(人事)→2次面接(現場マネージャー)→最終面接(役員)のステップを基本としています。職種により、課題提出や適性検査をお願いする場合がございます。 > > Q2. 応募から内定までの期間はどのくらいですか? > A2. ご応募いただいてから、通常2週間〜1ヶ月程度で内定となります。選考状況により前後する可能性がございますので、ご了承ください。 > ...
STEP2 「返信メールテンプレート」を量産させる
次に、ステップ1で作成したFAQリストを活用して、個別の問い合わせに返信する際のメールテンプレートをAIに作成させます。
【プロンプト例:メールテンプレート作成】
# 命令書 あなたは、丁寧かつ親切な人事担当者です。以下のFAQリストを元に、候補者からの個別の質問に返信する際のメールテンプレートを作成してください。 # 参考情報(FAQリスト) {ステップ1で生成されたFAQリストをここに貼り付け} # 作成するメールテンプレート ・「選考プロセス」に関する問い合わせへの返信メール ・「働き方(リモートワークやフレックス)」に関する問い合わせへの返信メール # トーン&マナー ・候補者に寄り添う、丁寧で誠実な言葉遣いを徹底してください。 ・企業の魅力をさりげなく伝え、応募意欲を高めるような表現を加えてください。
【AIによる出力例(一部抜粋)】
> 件名:選考プロセスに関するお問い合わせへのご回答(株式会社プロナビ) > > [候補者名]様 > > この度は、弊社にご興味をお持ちいただき、また、お問い合わせいただき誠にありがとうございます。 > 株式会社プロナビ 採用担当の[担当者名]でございます。 > > お問い合わせいただきました選考プロセスについて、ご案内いたします。 > > 基本的な選考の流れは、以下の通りです。 > 1. 書類選考 > 2. 1次面接(人事担当者) > 3. 2次面接(配属予定部署のマネージャー) > 4. 最終面接(役員) > > (後略) > ...
STEP3 【応用編】複雑な質問への「回答のたたき台」をAIに作ってもらう
定型的な質問だけでなく、少し複雑で回答に悩むような問い合わせに対しても、AIは有効です。完璧な回答ではなく、「回答のたたき台」を作成してもらうことで、ゼロから考える時間を劇的に短縮できます。
【プロンプト例:回答のたたき台作成】
# 命令書 あなたは、弊社のベテラン人事部長です。候補者から以下の少し答えにくい質問が届きました。この質問に対する回答メールの「たたき台」を作成してください。誠実さを伝えつつ、ポジティブな印象を与えられるような構成でお願いします。 # 候補者からの質問 「御社の口コミサイトで『業務量が多く、残業が常態化している』という書き込みを見ました。実際のところ、労働環境はどのようになっているのでしょうか?」 # 回答に含めるべき要素 ・口コミの内容を真摯に受け止めている姿勢 ・会社の成長フェーズに伴う一時的な課題であったことの説明 ・現在進めている労働環境改善の具体的な取り組み(例:業務効率化ツールの導入、採用強化による人員増) ・入社後のミスマッチを防ぐため、面接で正直に話す用意があること
【AI利用時の注意点】
AIが生成する情報は、必ずしも正確・最新であるとは限りません。特に、社内情報や機密情報を含む回答を作成する際は、生成された内容を必ず人の目でファクトチェックし、会社の公式見解と相違ないかを確認してから使用してください。 候補者の個人情報をプロンプトに直接入力することは絶対に避けてください。
AI活用のビフォーアフター
AIを導入することで、人事担当者の日常はどのように変化するのでしょうか。具体的な一日を想像してみましょう。
Before:問い合わせ対応に追われ、コア業務が後回しに…
午前中は、昨日までに溜まった候補者からの問い合わせメールを一件一件確認し、返信を作成。午後からは、急な問い合わせ電話に対応しているうちに、予定していた面接の準備がほとんど進まない。結局、夕方から夜にかけて、採用戦略の資料作成や候補者の情報整理に追われる毎日…。
After:AIに任せて生まれた時間で、候補者との面談準備に集中!
定型的な問い合わせにはAIが自動で一次回答。あなたはAIが判断に迷った複雑な質問への回答案を確認・修正するだけ。午前中に生まれた時間で、今日の面接で候補者に何を質問し、自社の魅力をどう伝えるか、じっくりと戦略を練ることができる。 コア業務に集中できることで、採用の質そのものが向上していきます。
まとめ
この記事でご紹介した方法は、AI活用のほんの入り口に過ぎません。AIを使いこなすことで、採用業務はさらにスマートで、戦略的なものへと進化します。
定型的な問い合わせ対応をAIに任せることで、人事担当者はより価値の高い「人」にしかできない業務に集中することができます。例えば、候補者一人ひとりとの対話や採用プロセス全体の改善といった、本質的な業務に時間とエネルギーを使えるようになるはずです。まずは本記事で紹介したプロンプトの活用から気軽に始めてみて下さい。この小さな実践が人事担当者の業務を根本から変えるきっかけになります。