そもそも「プロンプト」とは?
「プロンプトのコツ」を知る前に、まずは「プロンプトとは何か」「なぜそれがAIの回答の質に直結するのか」という基本を理解しておきましょう。この章では、その定義と仕組みを簡潔に解説します。
AIの性能を100%引き出す「指示書」
プロンプトとは、一言でいえば「生成AIに対する『指示書』」のことです。
AIは膨大な知識を持っていますが、利用者が「何を」「どのような目的で」求めているのかをAI自ら察することはできません。
プロンプトは、その膨大な知識の中から「どの情報」を「どのような視点で」「どのような形式で」取り出してほしいかを指定する、具体的な「絞り込み条件」の役割を果たします。
この指示書(プロンプト)が曖昧だと、AIはどの情報を優先すべきか判断できず、一般的で浅い回答しか返せません。明確な指示書を作成する「コツ」こそが、AIの性能を100%引き出すカギとなります。
プロンプトがAIの回答の質を決める理由
AIの回答の質がプロンプト次第で大きく変わるのには、明確な理由があります。
多くの生成AIは、入力された文章(プロンプト)の「次に来る、最も可能性の高い言葉」を予測し続ける仕組みで動いています。
つまり、「優秀なマーケターとして」と入力すれば、AIは「優秀なマーケターが次に言いそうな言葉」を予測して回答を生成します。
逆に「適当に考えて」と入力すれば、「適当な言葉」しか予測できません。AIの性能を最大限に引き出すカギは、AIに「質の高い予測」をさせるための、最初のお手本(プロンプト)にあるのです。
AIの精度を劇的に上げる「プロンプト8つの基本原則」
AIの回答精度を上げるには、守るべき型が存在します。ここでは、AIの性能を最大限に引き出すために最も重要な「8つの基本原則」を解説します。

1. 明確な「役割(ペルソナ)」を与える
AIに特定の専門家やキャラクターとしての「役割」を与えることは、最も簡単で効果的なコツです。AIは、その役割になりきって回答の視点やトーンを最適化してくれます。
【悪い例】
新商品のキャッチコピーを考えて。
【良い例】
#役割 あなたは、20年以上の経験を持つベテランのコピーライターです。 #指示 以下の新商品のキャッチコピーを10個考えてください。 #詳細 商品:30代男性向けのビジネスリュック 特徴:防水、軽量、PC収納
2. 「目的」と「ゴール(最終成果物)」を伝える
「何のために」その回答が必要なのかという「目的」と、「最終的に何が欲しいか」という「ゴール」を明確に伝えましょう。AIは目的から逆算して、最適な回答を生成しようとします。
【悪い例】
競合A社の分析をして。
【良い例】
#目的 当社が競合A社に勝つための新戦略のヒントを得る。 #ゴール 競合A社の「強み」「弱み」と「当社が突くべき弱点」をまとめたレポート。 #参考情報 競合A社のWebサイト:[URL] 当社の特徴:[URL] 上記の情報を基に、ゴールとなるレポートを作成してください。
3. 具体的な「制約条件」と「ルール」を指定する
AIは指示がない限り、自由な形式で回答を生成します。望む回答を得るためには、「文字数は800字以内」「専門用語は使わない」といった「制約条件」や「ルール」を明確に指定することが重要です。
【悪い例】
ChatGPTの使い方をブログ記事にして。
【良い例】
ChatGPTの使い方について、初心者向けのブログ記事を作成してください。 #制約条件 トーン:丁寧語(です・ます調) 対象読者:PC操作に不慣れなシニア層 文字数:1000文字程度 禁止事項:専門用語(例:UI、パラメータ)は使わず、平易な言葉で説明する
4. 「出力フォーマット」を指示する
回答の「形式」を具体的に指定することも重要です。AIは本来文章で回答しようとしますが、「表形式で」「箇条書きで」と一言添えるだけで、情報を整理して見やすく出力してくれます。
さらに、こちらから「|(パイプ)」記号を使って表の見出し(列)を厳密に指定することも可能です。
【悪い例】
iPhoneとAndroidのメリット、デメリットを教えて。
【良い例(シンプル版)】
iPhoneとAndroidのメリット、デメリットを、比較しやすいように「表形式」でまとめてください。
【良い例(詳細指定版)】
iPhoneとAndroidの比較表を作成してください。 #指示 以下の「出力フォーマット(見出し行)」と「比較する行(項目)」に従って、表形式で出力してください。 #出力フォーマット(見出し行) | 比較項目 | iPhone | Android | #比較する行(項目) ・メリット ・デメリット ・主な価格帯
5. 指示・文脈・例を「記号」で構造化する
複数の指示や参考情報(文脈)を一度に渡す場合、AIが「どこまでが背景説明」で「どこからが具体的な指示」なのかを明確に認識できるよう、「記号」を使って構造化することが有効です。
AIは記号を「情報の区切り」や「特定の情報ブロック」として認識します。代表的な記号の主な使い方は以下の通りです。
| 記号 | 主な意味(役割) | 使用メリット |
|---|---|---|
| #(ハッシュ ) | 見出し / セクション | 指示全体を「#役割」「#指示」「#ルール」といった大きな章立てに分離し、構造を明確にする |
| """(トリプルクォート) または ---(ハイフン3つ) | 文章ブロック / 引用 | 要約させたい長文や、返信元のメール本文など、「ここからここまでが1つのテキストブロックである」とAIに正確な範囲を伝える |
| <>(山括弧) | タグ / ラベル | 特定の情報(例:<文脈>...</文脈>)にラベルを付け、それが特別な意味を持つことをAIに強く示唆できる |
こうした記号で情報を整理することで、AIの誤解を防ぎます。
【悪い例】
田中さんからのメールに返信して。A案を採用します。理由はコストとスピード。 来週の会議で詳細を話したいと伝えてください。
(※AIは「田中さんからのメール」がどんな内容だったか知らず、口語的な指示を正確にビジネスメールに変換できない)
【良い例】
以下の「引用メール」に対する返信メールを作成してください。 <役割> あなたは、A社の田中様とプロジェクトを進めているB社の鈴木です。常に丁寧で迅速な対応を心がけています。 </役割> #指示 ・提案されたA案・B案のうち、「A案」を採用することを伝える。 ・その理由(コストメリットと導入スピード)を簡潔に添える。 ・来週の定例会で詳細を詰めたい旨を伝える。 #引用メール(返信元) """ B社 鈴木様 お世話になっております。A社の田中でございます。 先日の件、A案とB案の資料をお送りいたします。 ご確認の上、どちらの案で進めるかご教示いただけますと幸いです。 ...(中略)... 何卒よろしくお願い申し上げます。 """ #ルール ・A社の田中様宛のメールとして作成する。 ・件名は「Re: 先日の件(A案・B案のご提案)」とする。
6. 「思考プロセス」をステップ・バイ・ステップで実行させる
複雑な質問や分析を依頼する際、一気に結論を出させようとすると回答の精度が落ちることがあります。 こうした精度低下を防ぐのが「CoT (Chain of Thought / 思考の連鎖)」と呼ばれるテクニックで、「ステップ・バイ・ステップで考えて」「まずAを分析し、次にBを評価し、最後に結論を出して」と、AIに思考の過程を段階的に指示することで、より深く正確な回答を導き出せます。
【悪い例】
売上が落ちている原因と対策を教えて。
【良い例】
当社のECサイトの売上減少について、原因と対策を分析してください。 以下のステップ・バイ・ステップで思考してください。 1. ステップ1(原因分析): 考えられる原因を「内部要因(Webサイトの問題、価格など)」 と「外部要因(競合、市場トレンドなど)」に分けてリストアップする。 2. ステップ2(仮説構築): 最も可能性の高い原因の仮説を3つ立てる。 3. ステップ3(対策立案): ステップ2の各仮説に基づいた具体的な対策案を立案する。
7. 参考となるお手本を提示する 「Few-shot」方式
AIに文章のスタイルや回答のトーンを真似させたい場合、言葉で指示するよりも具体的なお手本を見せるのが最も効果的です。 これは「Few-shot(少数事例学習)」と呼ばれるテクニックです。
【悪い例】
親しみやすいトーンで、商品の紹介文を書いてください。
【良い例】
以下の<お手本の文体>を参考に、新商品「うるおい保湿ローション」の紹介文(150文字程度)を作成してください。 <お手本の文体> 「もうカサカサなんて言わせない!まるで赤ちゃんの肌みたいに、ぷるんと潤う「奇跡のしずく」が新登場。毎日のスキンケアが、ちょっと特別な時間に変わるかも?」
8. あいまいな表現を避け、具体的に記述する
AIは文脈を察することが苦手です。「あれ」「それ」「いい感じに」といった曖昧な指示語や感覚的な表現は避け、「何を」「どうする」を具体的に記述する必要があります。
【悪い例】
前回の続きをいい感じに修正して。
【良い例】
前回の回答(ブログ記事の構成案)について、以下の点を修正してください。 1. 修正点1: H2-1「ChatGPTとは」の章が長すぎるため、内容を半分(約300文字)に要約する。 2. 修正点2: H3の見出しを、より読者の興味を引くキャッチーな表現に変更する。
【コピペOK】実務ですぐ使える!職種・シーン別プロンプト例文集
8つの基本原則を応用した実務で使える「プロンプト例文」を紹介します。対象読者(ペルソナ)やキーワードなど、[ ] で囲まれた部分を自身の業務内容に合わせて書き換えるだけで、すぐに使えるようになっています。
1. マーケティング・企画
Webサイトへの集客やコンテンツマーケティングにおいて、AIは強力な壁打ち相手になります。ターゲットとキーワードを指定し、SEOに強い記事構成案を作成させます。
ブログ記事構成案作成プロンプト
<役割> あなたは、SEO対策に精通したプロのWebコンテンツ編集者です。 </役割> #指示 以下の「ターゲット」と「キーワード」に基づき、SEO(検索エンジン最適化)に強く、読者の検索意図を満たすブログ記事の「構成案」を作成してください。 #ターゲット [例:中小企業のマーケティング担当者、初めてAIに触れる人] #キーワード [例:プロンプト コツ] #ルール ・記事の「タイトル案」を3つ提案してください。 ・読者の悩みに共感する「導入文」を作成してください。 ・H2見出しと、各H2見出しで解説すべき内容(H3見出しや箇条書き)を含めてください。 ・読者が次に行動したくなるような「まとめ」の文章も作成してください。 #出力フォーマット 以下の形式で出力してください。 タイトル案1:〜 タイトル案2:〜 タイトル案3:〜 導入文:〜 H2:見出し H3:見出し H3:見出し H2:見出し (解説すべきポイントを箇条書き) まとめ:〜
2. 営業・営業企画
新規顧客へのアプローチメールの文面作成も、AIの得意分野です。相手のメリットを提示し、返信率の高いメールを作成させます。
新規アポ依頼メール作成プロンプト
<役割> あなたは、BtoBセールスにおいて高い成果を上げているトップセールスパーソンです。相手の課題を的確に捉え、メリットを提示するメール作成を得意としています。 </役割> #指示 以下の「ターゲット企業」と「自社サービス」の情報を基に、アポイントメントを獲得するための「新規アプローチメール」の文面を1通作成してください。 #ターゲット企業(相手) ・業種:[例:製造業] ・想定される課題:[例:古いシステムによる業務非効率、人手不足] #自社サービス(自分) ・サービス名:[例:クラウド型在庫管理システム「Stock-AI」] ・提供できる価値(メリット):[例:導入コスト半減、在庫管理の自動化] #ルール ・件名は「[例:貴社の在庫管理コストを半減させる「Stock-AI」のご提案]」のように、相手のメリットが伝わるものにしてください。 ・相手の時間を奪わないよう、本文は500文字程度で簡潔にしてください。 ・「なぜあなた(ターゲット企業)に連絡したのか」という理由を明確にしてください。 ・Zoomでの30分間のご挨拶(デモ)をゴールとした、日程調整の依頼で締めくくってください。
3. 一般事務・バックオフィス
会議の文字起こしや録音データをAIに読み込ませることで、議事録の作成時間を大幅に短縮できます。「要約」と「タスク抽出」を同時に行わせるのがコツです。
議事録の要約とタスク(ToDo)抽出プロンプト
#指示 以下の「会議の文字起こしテキスト」を読み込み、「会議の要約」と「決定事項・ToDoリスト」を抽出してください。 #ルール ・「会議の要約」は、会議の主要なトピックと結論が3分で理解できるように、箇条書きでまとめてください。 ・「決定事項・ToDoリスト」は、「誰が」「いつまでに」「何をするか」が明確に分かるように、表形式でまとめてください。 #出力フォーマット 会議の要約 ・(ここに要約を箇条書き) 決定事項・ToDoリスト | 担当者 | タスク(何をするか) | 期限 | #会議の文字起こしテキスト """ (ここに、会議の文字起こしテキストを貼り付ける) """
4. 汎用(全職種共通)
最も多くのシーンで使えるのが、長文の要約です。ただ「要約して」と指示するのではなく、「誰のために」「どのくらい」要約するのかを指定することが重要です。
長文資料要約プロンプト
<役割> あなたは、複雑な情報を簡潔にまとめるのが得意な編集者です。 </役割> #指示 以下の「元テキスト」を読み込み、指定のルールに従って要約してください。 #ルール ・目的: [例:忙しい経営層が、移動中に3分で内容を理解するため] ・分量: 全体を[例:400文字程度]で要約する。 ・形式: 重要なポイントが先に伝わるよう、結論ファーストの箇条書きにする。 #元テキスト """ (ここに、要約したいニュース記事やレポート、メール本文などを貼り付ける) """
【脱・初心者】一発で決まらない時の「回答を育てる」対話のコツ
8つの基本原則をしっかり守ったプロンプトでも、一発で100点満点の回答が得られるとは限りません。AI活用の本質は、AIとの「対話」を通じて、回答を理想の形に整えていく作業にあります。
この章では、期待通りの回答が来なかった時に、AIをどのように導けばよいか、具体的な「対話のコツ」を紹介します。

期待通りでない回答が来た時の「修正指示」の出し方
AIの回答がずれている場合、新しいチャットを開始するのではなく、同じチャット内で修正を指示するのが基本です。AIは直前の文脈を記憶しているため、具体的な修正点を指摘するだけで意図を汲み取ってくれます。
【例:AIの回答がずれた時】
自分(最初の指示):
「営業部の新人向けに、ビジネスマナー研修の概要を考えて」
AIの回答:
「ビジネスマナー研修の概要です。1. 敬語の使い方、2. 名刺交換の方法、3. 電話応対、4. メール作成...(以下略)」
自分(修正指示):
ありがとう。敬語や名刺交換は不要です。 今回は「訪問時のマナー(服装、挨拶、退出時の作法)」と「オンライン会議でのマナー(カメラ映り、背景、発言方法)」の2点に絞って、内容を具体的に修正してください。
回答の解像度を上げる3つの質問
AIの回答が「浅い」「一般的すぎる」と感じた時は、簡単な質問を投げかけるだけで、回答の解像度を上げることができます。
- 「なぜ?」: AIが提示した結論や理由の「根拠」を深掘りさせる
- 「具体的には?」: 抽象的な表現を、具体的な行動や事例に落とし込ませる
- 「他には?」: AIが提示したアイデアや選択肢以外の、別の視点や案を出させたい時に使用する
【例:回答が浅い時】
AIの回答:
「売上を上げるには、SNSマーケティングが有効です。」
自分(深掘り指示):
具体的には、どのようなSNSを、どのように使えば有効だと考えられますか?
AIの回答:
「具体的には、貴社のターゲット(30代男性)を考慮すると、ビジネス系の情報発信が多いX(旧Twitter)や、専門性をアピールできるYouTubeが有効です。Xでは...(以下略)」
AIに「自己評価・自己修正」させるテクニック
このテクニックは、AIの回答が「本当に正しいか」「もっと良い案がないか」をAI自身に考えさせる高度な手法です。「自己評価」や「批判的思考(クリティカルシンキング)」を促す指示が有効です。
【例:回答をブラッシュアップさせたい時】
AIの回答:
「新商品のキャッチコピー案は『革新的なテクノロジー、未来の体験』です。」
