1. そもそも、プロンプトに記号を使うと何が変わるのか
⚠️ 注記: 記号の解釈のされ方はAIモデルやバージョンによって変わりえます。本記事の内容は「必ずこう動く」という保証ではなく、OpenAI・Anthropic・Googleなど各社の公式ガイドや実務での使われ方に基づいた「こう解釈されやすい」という整理です。最新の仕様は各社公式ドキュメントでご確認ください。
「ただ文章で指示を書く」プロンプトと、「記号で構造を示しながら指示を書く」プロンプトでは、AIの読み取りやすさが変わってきます。
ChatGPTを提供するOpenAIの公式ガイドは、「Markdownの見出しやリストは、プロンプトの中の異なるセクションを区切り、AIに階層構造を伝えるのに役立つ」と説明しており、# Identity(役割定義)→# Instructions(指示)→# Examples(例)のように、見出し記号でプロンプト全体を区分けする構成例を示しています。Claudeを提供するAnthropicの公式ガイドも、指示・文脈・具体例・入力データが混在する複雑なプロンプトでは、XMLタグを使うと要素ごとの境界が明確になり、AIが誤って解釈しにくくなるとしています。Geminiを提供するGoogleの公式ガイドも同様に、XMLタグまたはMarkdown見出しでプロンプトの中身を区切ることを効果的な手法として挙げています。
つまり、「指示」「参考データ」「出力してほしい形式」「具体例」といった性質の違うブロックを、記号で目に見える形に区切っておくというのが、3社に共通する考え方です。文章だけで全部つなげて書くと、AIが「どこまでが指示で、どこからが参考テキストなのか」を読み違えるリスクが上がりますが、記号で区切っておけばその境目を人間にとってもAIにとっても分かりやすくできます。
ここで一つ、検索でよく聞かれる疑問に触れておきます。「###」は現在では「見出しレベル3」として使われることが主流ですが、ChatGPTの前身であるGPT-3の時代には、システム指示・会話履歴・現在の入力といったブロックを区切る「区切り文字」として広く使われてきた歴史があります。今のモデルでは見出しとしての意味合いのほうが強くなっていますが、「###で区切る」という慣習は今でも根強く残っており、「### 意味」と検索する人の多くは、この「区切り文字としての###」を思い浮かべていることが少なくありません。両方の使われ方を知っておくと、他の人が書いたプロンプトを読むときにも迷わなくなります。
2. 保存版:AIプロンプトで使う記号一覧表(12選)

実務でよく使われる記号12種類を、読み方・役割・使う場面・記述例にまとめました。まずは一覧で全体像をつかんでください。
| 記号 | 読み方・呼び名 | 主な役割 | 使う場面 | 記述例 |
|---|---|---|---|---|
# | シャープ/見出し1 | プロンプト全体の最上位区分を示す | 「役割定義」「指示全体」など、一番大きな塊を示したいとき | # Instructions |
## | シャープ2つ/見出し2 | #の下にくる中位のセクションを示す | 指示の中をさらに項目分けしたいとき | ## 出力フォーマット |
### | シャープ3つ/見出し3 | さらに細かい小見出し、または旧来の区切り文字 | 項目をより細分化したいとき、または指示文とデータの塊を区切りたいとき | ### 参考テキスト |
3. 【コピペOK】記号を使った構造化プロンプトのテンプレート4選

ここからは、記号を実際に組み合わせた「そのままコピペして使えるプロンプト」を4つ紹介します。いずれも#や##で区切り、必要に応じて---や"""で本文データを分離する構成にしています。
テンプレート1:会議メモを議事録に整理する
# 命令書 あなたは経験豊富な議事録担当者です。 以下の[会議メモ]を読み、議事録として整理してください。 ## 出力フォーマット - 決定事項(箇条書き) - ToDo(担当者・期限つき、表形式) - 保留になった論点(箇条書き) ## ルール - 会議メモに書かれていない情報を推測で補わない - 不明な点は「(要確認)」と明記する --- ## 会議メモ """ (ここに会議メモや文字起こしを貼り付け) """
なぜ効くのか: #と##で「命令」「出力フォーマット」「ルール」というブロックを分け、---で指示部分と参考データ部分を切り離し、さらに"""で会議メモそのものを囲んでいます。AIから見て「どこまでが指示で、どこからが処理対象のテキストか」が視覚的にはっきりするため、会議メモの中の一文を指示だと誤読するようなズレを防ぎやすくなります。
テンプレート2:資料・企画書のたたき台を作る
# 命令書 以下の[テーマ]について、社内向け企画書のたたき台を作成してください。 ## 構成 1. 背景・課題 2. 提案内容 3. 期待される効果 4. 想定コスト・体制(分かる範囲で表形式) 5. 次のアクション ## ルール - 各セクションは箇条書きで3〜5項目にまとめる - 数値は分かる範囲のみ記載し、不明な数値は「要調査」と書く --- ## テーマ (ここに企画のテーマ・背景の概要を記載)
なぜ効くのか: ##の下に番号付きリストで章立てそのものを指定することで、AIが自己流の構成で書き始めるのを防ぎます。「表形式で」という指示を|の使用を意識させる形で入れておくと、出力側でも表が整いやすくなります。
テンプレート3:社外向けメール文面を作る
# 命令書 以下の[参考メモ]をもとに、お客様向けの丁寧なメール文面を作成してください。 ## 出力フォーマット 件名: 本文: (宛名 → 挨拶 → 要件 → 次のアクション → 結び、の順) ## ルール - 敬語は二重敬語にならないよう自然な表現にする - 参考メモにない約束や数値を勝手に追加しない - 顧客名は「○○様」に置き換える --- ## 参考メモ """ (ここに伝えたい要件を箇条書きやメモ書きで貼り付け) """
なぜ効くのか: メールに必要な「件名・本文の流れ」を##のブロックであらかじめ固定し、"""で囲んだ参考メモと指示部分を明確に分離しています。「勝手に追加しない」というルールを明記することで、メモに書いていない内容をAIが創作してしまうリスクを抑えられます。
テンプレート4:バラバラのデータを表形式に整理する
<instructions> 以下の<data>内のテキストを読み取り、表形式に整理してください。 </instructions> <output_format> | 項目名 | 内容 | 備考 | |---|---|---| (データから読み取れる行を必要な数だけ追加する) </output_format> <rules> - データに存在しない項目は「不明」と記載する - 表以外の説明文は出力しない </rules> <data> (ここに整理したい雑多なテキストやメモを貼り付け) </data>
なぜ効くのか: XMLタグで「指示」「出力フォーマット」「ルール」「処理対象データ」を明確に分けています。Markdownの#と違い、XMLタグは開始タグと終了タグで囲むため、データの中に#や##のような記号がたまたま含まれていても、指示部分と混同されにくいという利点があります。ただし、Markdown見出しとXMLタグを同じプロンプトの中で混在させすぎると逆に読みにくくなるため、1つのプロンプトの中では基本的にどちらかの形式に統一するのがおすすめです。
4. よくある間違い・注意点

記号は便利ですが、使い方を誤ると逆効果になることもあります。よくある間違いを整理しておきます。
記号を使いすぎて、かえって読みにくくなる
#や##を何段階にもネストさせたり、ほぼすべての語句を**強調**にしたりすると、どこが本当に重要なのかがかえって分からなくなります。記号は「本当に区切りたいところ」「本当に強調したいところ」だけに絞って使うのがコツです。
AIの出力に出てくる記号と、入力で使う記号を混同する
AIの回答の中に*や#が出てきたとき、それは「AIが出力側で使ったMarkdown記法」であり、こちらが入力したプロンプトの記号とは役割が別です。回答に記号が出てきた場合の意味については、既存記事(アスタリスク編・シャープ編)で個別に扱っているので、混同しそうなときはそちらを参照してください。
「###は必ず区切りとして認識される」と思い込む
### は現在のモデルでは見出し記号として解釈されることが多く、GPT-3時代のような「区切り文字」として必ず機能するとは限りません。区切りを明確に示したい場合は、---や"""、XMLタグなど、より意図が伝わりやすい記号と併用するほうが安全です。
MarkdownとXMLタグを同じプロンプトの中で乱雑に混在させる
Google公式のガイドも、XMLタグとMarkdown見出しは「混在させず、どちらか1つの形式に統一する」ことを推奨しています。プロンプトが長くなるほど、記法を統一したほうが構造を見失いにくくなります。
@をどのAIチャットでも使える記号だと思い込む
繰り返しになりますが、@はChatGPTやGeminiの通常のチャット欄では特別な意味を持たない、ただの文字であることがほとんどです。Claude Codeなど特定の開発ツールの機能だと理解しておくと、「入れたのに反応しない」という混乱を避けられます。
5. 記号ごとにもっと詳しく知りたい人へ
ここまで12種類の記号を一覧で紹介しましたが、それぞれの記号にはもう少し深掘りしたい背景があります。
- 「AIプロンプトの「#」には意味がある?」──
#の意味と、見出し記号としての具体的な使いどころをさらに詳しく解説しています。 - 「AIの回答にある「アスタリスク(*)」の意味とは?」──入力ではなく、AIの回答の中に
*が出てきたときにどう読めばよいかを扱っています。 - 「長文・複雑な指示の誤作動を防ぐプロンプトのマークダウン記法とは?」──長文・複雑な指示を書くときのマークダウン記法全体の考え方を、より体系的に整理しています。
まずは本記事の一覧表とテンプレートで全体像をつかみ、気になった記号があれば個別記事で深掘りする、という順番がおすすめです。
6. 【本題】記号の使い方は「型」にすれば、組織で再現できる
ここまで紹介してきた記号の使い分けは、個人がプロンプトを書くときのコツとして役立ちます。ただ、実務で本当に効いてくるのは、この使い方を「その人だけのコツ」で終わらせず、チームで再現できる型にすることです。
たとえば、本記事のテンプレート1〜4のような「よく使う業務のプロンプト」を組織で決まった形にまとめておけば、誰が使っても同じ品質のアウトプットに近づけますし、新しく入ったメンバーにも「このテンプレを使って」と渡すだけで済みます。逆に、記号の使い方や構造化の工夫が個人の頭の中にしかない状態だと、その人が異動・退職した瞬間にノウハウごと失われてしまいます。
私たちが提供している「Protostar AI Works」では、こうした個人の使い方の工夫を、組織で共有できるプロンプトのテンプレートや業務の手順として整理し、実際の業務に定着させるところまでを伴走して支援しています。「記号の使い方は分かったけれど、これを組織のルールにまで落とし込む時間がない」という場合には、そうした型化・定着の部分を一緒に進めることも可能です。
まとめ
- OpenAI・Anthropic・Googleの公式ガイドはいずれも、Markdown見出しやXMLタグでプロンプトのセクションを区切ることを共通して推奨している。
#・##・###は見出し記号として使うのが現行の主用途。###には「GPT-3時代の区切り文字」という歴史的な使われ方もあり、両方を知っておくと迷いにくい。*``**は箇条書き・強調として解釈されやすく、多用しすぎると逆に読みにくくなる。```や"""は「指示と処理対象のテキストを分離する」ための囲み記号として近い役割を持つ。- XMLタグは指示・文脈・例・入力を役割ごとに明示できるが、Markdownと混在させすぎず、1つのプロンプトでは形式を統一するのが安全。
@は対話型AIチャットの一般的な記号ではなく、Claude Codeなど開発ツール固有のファイル参照構文である点に注意する。- 記号は「必ずこう解釈される」という保証があるものではなく、「こう解釈されやすい」という目安として使い、モデルやバージョンの違いによる挙動の変化は最新の公式情報で確認する。
⚠️ 記号の解釈のされ方はAIモデル・バージョンのアップデートによって変わりうるため、本記事の内容は執筆時点の整理です。最新の仕様は各社公式ドキュメントでご確認ください。
出典・参考
- OpenAI公式「Prompt engineering guide」
https://developers.openai.com/api/docs/guides/prompt-engineering
※Markdown見出し・リストによるセクション区切り、XMLタグとMarkdownの併用に関する記述。 - OpenAI「GPT-4.1 Prompting Guide」(OpenAI Cookbook)
https://developers.openai.com/cookbook/examples/gpt4-1_prompting_guide
※セクション・サブセクションへのMarkdownタイトル使用、リスト・コードブロックの推奨。 - Anthropic公式「Claude Prompting best practices(Use XML tags to structure your prompts)」
https://platform.claude.com/docs/en/docs/build-with-claude/prompt-engineering/use-xml-tags
※XMLタグによる指示・文脈・例・入力の分離、Markdown抑制時の**``*使用に関する記述。 - Google公式「Gemini API Prompt design strategies」
https://ai.google.dev/gemini-api/docs/prompting-strategies
※XMLタグ・Markdown見出しによる区切りと、形式を統一する推奨。 - Claude Code公式ドキュメント「Best practices」
https://code.claude.com/docs/en/best-practices
※@によるファイル参照構文の説明。 - Portkey「Delimiters in Prompt Engineering」(第三者解説)
https://portkey.ai/blog/delimiters-in-prompt-engineering/
※GPT-3時代における###の区切り文字としての慣習的な使われ方の解説。
※「XML構造化により一貫性が20〜40%向上する」といった第三者記事に見られる数値は、Anthropic公式ドキュメント本文で確認できなかったため本記事では使用していません。トリプルクォート(""")に関するOpenAIヘルプセンターの原文は本調査時点で直接確認できておらず、「広く知られた手法」という表現に留めています。

