この記事でわかること
- 回答精度を安定させるプロンプト構造の基本フレーム
- 実務ですぐ使えるプロンプト例
プロンプト(Prompt)の意味とは?
「プロンプト」という言葉は、AIに対する単なる質問以上の意味を持っています。ビジネスでの活用において、どのように捉えるべきかを確認しましょう。
元々は「促す」という意味のIT用語
生成AIにおけるプロンプトとは、AIに対する「指示」や「命令」の総称です。
Promptという英語には「促す」「刺激する」という意味があり、IT用語としても古くから「入力を促す(コマンドプロンプト)」という意味で使われてきました。 つまり、AIに対して「回答やアクションを促すための入力」すべてがプロンプトです。
ビジネスでは「業務指示書」と捉える
ビジネスの現場では、プロンプトを単なる検索ワードや質問ではなく、「部下への業務指示書」と捉えるのが正解です。
- プロンプト: 「新商品のプレスリリースを作成してください」という指示
- AIの回答: 指示に基づいて作成された成果物
指示が曖昧だと部下の成果物の質が下がるのは、人間同士の仕事と全く同じです。だからこそ、AIに意図を正しく伝えるための「書き方」が重要になるのです。
なぜプロンプトに「#」や記号が使われるのか?
高度なプロンプトの事例を見ると、「#(シャープ/ハッシュタグ)」や「"""(ダブルクォーテーション)」といった記号が多用されています。
一見するとプログラミングコードのようにも見えますが、これらは決して難解な暗号ではありません。実は、人間同士のビジネス文書でも意識されている「あるルール」を、AI向けに適用しているだけなのです。
「#」の正体はハッシュタグではない
SNSで馴染みのある「#」ですが、プロンプトにおいてはタグ付け(分類)の意味ではありません。これはIT業界で標準的に使われるMarkdown(マークダウン)記法という文書作成ルールにおける「見出し」を表す記号です。
生成AIはインターネット上の膨大なテキストデータを学習していますが、その多くはこのMarkdown形式で構造化されています。そのため、プロンプト内で以下のように記述することで、文章の構造を瞬時に理解させることができます。
- # :大見出し(タイトル)
- ## :中見出し(章)
- ### :小見出し(節)
「#」は、AIに対して「ここから話題が変わります」「ここが重要な項目です」と構造を明示する役割を果たしています。
記号を使う最大のメリットは「AIの誤読防止」
では、なぜわざわざ記号を使って構造化する必要があるのでしょうか。
最大の理由は、AIによる指示内容の「誤読」を防ぐためです。
AIは文脈を理解する能力に長けていますが、長文を一続きで書いてしまうと、「どこまでが前提条件で、どこからが実行すべき命令なのか」を正確に判断できなくなる場合があります。
そこで、記号を「区切り線」や「案内標識」として活用します。
- 見出し「#」: 情報のまとまりを示す/話題の切り替えを示す
- 区切り文字「""" 」や「 ---」: 「ここからここまでが参照データである」と範囲を明確にする
これにより、AIは「指示文」と「処理対象のデータ」をはっきり区分して認識できるようになり、回答の精度が安定します。
記号あり・なしで伝わりやすさはこう変わる
実際に、記号の有無でプロンプトの構造がどう変わるかを見てみましょう。

【悪い例:ベタ打ちの指示】
これでは、どこが「要約すべき文章」で、どこが「指示」なのかが一目でわかりづらく、AIが混乱して指示の一部を見落とすリスクがあります。
【良い例:記号で整理された指示】
# 命令 以下の文章を要約してください。
# 入力文章 """ 昨今のAI技術は……(長文)…… """
# 制約条件
・300文字以内
・箇条書き
人間が読んでも、「良い例」の方が圧倒的に理解しやすいはずです。「人間にとって読みやすく整理された文章」は、「AIにとっても理解しやすい文章」なのです。記号は、その整理を手助けするツールに過ぎません。
これだけ覚えればOK!プロンプト頻出記号の意味一覧
「プログラミング言語を覚えるのはハードルが高い」と感じる方も多いでしょう。しかし、ビジネス活用において覚えるべき記号は、それほど多くありません。
実務で頻繁に使うのは、主に以下の3種類だけです。これらを使いこなすだけで、AIへの指示は格段に伝わりやすくなります。

1. 階層を作る「#」
前述の通り、「#」は情報の「見出し」を作るための記号です。情報の重要度やまとまりを示すことで、AIに文章の構造を視覚的に伝えます。WordやPowerPointの見出し機能と同じ感覚で使ってください。
- # (シャープ1つ): 大見出し(一番大きなテーマ)
- ## (シャープ2つ): 中見出し(その中の項目)
【使用例】
# 命令書 あなたはプロのマーケターです。以下の条件でキャッチコピーを考えてください。 ## ターゲット 30代の働く女性 ## 商品の特徴 時短で栄養が摂れる完全食
このように階層化することで、AIは「ターゲット」と「商品の特徴」が、どちらも「命令書」を構成する要素であることを正しく認識します。
2. 範囲を指定する「"""」や「---」
専門用語で「区切り文字(デリミタ)」と呼びます。「ここからここまでがセットの文章である」という情報の境界線を引くための記号です。
特に「要約」や「翻訳」などの長い文章をAIに読み込ませる際に必須となります。
- """ (ダブルクォーテーション3つ)
- --- (ハイフン3つ)
【使用例】
以下のテキストを要約してください。 # 対象テキスト """ (ここに議事録やニュース記事などの長文を貼り付ける) """
この記号で挟むことで、AIは「"""の内側は命令ではなく、読み込むべきデータ(素材)である」と明確に区別できるようになります。これにより、対象テキストの中に含まれる言葉を、誤って「命令」として実行してしまうミスを防げます。
3. 空欄(変数)を表す「{ }」や「[ ]」
定型業務を効率化するためのテンプレート(型)を作るときに役立つ記号です。「ここには後で具体的な言葉が入る」という仮置き場として機能します。
- { } (波括弧)
- [ ] (大括弧)
【使用例】
あなたは {職業} です。
以下の {商品} の魅力を伝える紹介文を書いてください。このように書いておけば、使うたびに {職業} や {商品} の部分だけ書き換えるだけで、同じ精度の指示を何度でも再現できます。チームでプロンプトを共有する際にも非常に便利です。
頻出記号についてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください!
【実践編】意味がわかれば書ける!基本のプロンプト構成
記号の使い方を一通り押さえたところで、次はその記号を組み合わせた「実践的な書き方」を見ていきましょう。
ここでは、プロンプトエンジニアリングの分野で広く使われている「型」を紹介します。ゼロから文章を考えるのではなく、このフレームワークに当てはめるだけで、誰でも安定して高精度な回答を引き出せるようになります。
質の高い回答を引き出す基本フレーム
ビジネスで成果を出すプロンプトは、基本的に以下の4つの要素で構成されています。

1. 役割 (Role):AIにどのような立場で回答してほしいか(例:プロの編集者、人事部長、敏腕コンサルタント)
2. 命令 (Instruction):具体的に何をさせたいか(例:要約して、案を出して)
3. 入力データ (Context):処理してほしい情報(例:会議録、メール本文)
4. 制約条件 (Constraints):出力時のルール(例:300文字以内、箇条書き、表形式)
この4つを、先ほどの「#」を使って整理するだけで、AIのパフォーマンスは最大化されます。
ビジネスですぐ使えるプロンプト例
すぐに使える3つのシーン別プロンプト例を用意しました。コピーして、{ } の部分や本文を書き換えてご活用ください。
1. 会議の議事録要約
長文のテキストを読み込ませる際は、"""(区切り文字)が活躍します。
# 役割 あなたは優秀なプロジェクトマネージャーです。 多忙な役員のために、会議の内容を短時間で把握できるよう整理してください。 # 命令 以下の【会議メモ】を要約し、決定事項とネクストアクションを明確にしてください。 # 会議メモ """ (ここに会議の文字起こしテキストを貼り付け) """ # 出力形式 以下の形式で出力してください。 ## 議題: ## 決定事項: * (箇条書きで記載) ## ネクストアクション(担当者・期限): * (箇条書きで記載)
2. 取引先へのメール作成
トーン&マナー(丁寧さ)を調整したい場合は、「制約条件」で指定するのがコツです。
# 役割
あなたは丁寧で気配りのできる営業担当者です。
# 命令
以下の条件に基づき、取引先に送るアポイント調整のメール文面を作成してください。
# 変数
* 相手の会社名: {株式会社〇〇}
* 相手の氏名: {△△様}
* 用件: {新サービスの提案について}
* 候補日時: {来週の火曜か水曜の午後}
# 制約条件
* 相手との関係性は良好だが、失礼のない敬語を使うこと。
* 簡潔で読みやすい構成にすること。
* 最後に「ご検討のほど、よろしくお願いいたします。」で締めること。3. 企画アイデア出し(壁打ち)
AIにアイデアを出してもらう際は、「表形式」を指定すると比較検討しやすくなります。
# 役割
あなたは経験豊富なマーケティングプランナーです。
# 命令
20代向けの新しい「{商品ジャンル}」の販促キャンペーン案を5つ提案してください。
# 制約条件
* 予算は低コストで実施できるもの。
* SNSでの拡散(バズ)を狙ったユニークな企画であること。
# 出力形式
以下の項目を含む「表形式」で出力してください。
| アイデア名 | 概要 | ターゲット心理 | 期待効果 |いかがでしょうか。
ただ文章で「〇〇して」と頼むよりも、「#」で見出しをつけ、「制約条件」でルールを明確にすることで、AIが迷わずにゴールへ到達できることがイメージできたかと思います。難しそうに見えるプロンプトも、実際はこうしたシンプルなルールの積み重ねにすぎません。
プロンプト作成で失敗しないためのコツ
記号を使って指示を整理できるようになれば、大きな失敗は起こりにくくなります。さらに精度を高め、AIとのやり取りをスムーズにするためには、以下の3つのポイントを意識してみてください。
1. 曖昧な言葉を避ける
AIは非常に優秀ですが、人間の同僚のように「空気を読む」ことは苦手です。特に、ビジネスの現場で使いがちな曖昧な指示(あれ、それ、適当に)は、失敗の大きな原因になります。
| 悪い例 | 良い例 |
|---|---|
| 「いい感じにまとめておいて」 | 「箇条書きを使って、300文字以内で要約して」 |
| 「それを修正して」 | 「2行目の『売上』という数値を『利益』に修正して」 |
「適当に」「なるべく」「いい感じに」といった言葉は使わず、具体的な数値や、誰が見ても誤解のない明確なキーワードを使って指示する癖をつけましょう。
2. 一度で完璧を目指さず「対話」で修正する
プロンプト入力において、「一発で100点の回答を出そう」と構える必要はありません。
人間相手でも、一度の指示で完璧な資料が仕上がらないことがあるように、AIも最初は60点から70点の回答を出してくることがよくあります。重要なのは、そこからのフィードバック(修正指示)です。
- 「内容はいいけど、もう少しフランクな口調に変えて」
- 「長すぎるから半分に削って」
- 「表形式にして見やすくして」
このように、チャット形式で追加の指示を出し、対話を重ねながら完成度を高めていくのが、生成AIを業務で使いこなすための基本的な考え方です。
3. うまくいった型を「資産」として保存する
自分なりの「うまくいく型」ができたら、それを保存しておくことをおすすめします。
「この書き方をしたら、いい議事録ができた」「この指示だと、好みのメール文面になった」というプロンプトは、次回も使える業務資産です。
メモ帳アプリや社内の共有ドキュメントに、成功したプロンプトをテンプレートとして残しておけば、次回からのプロンプト作成時間を大幅に短縮できます。

