1. 何が発表されたのか
⚠️ 注記: 本記事は、Anthropic、Linux Foundation、Agentic AI Foundation(AAIF)の公式発表(2026年10月22日時点)にもとづく解説です。対応ツールや仕様は今後変わる可能性があります。最新の情報は、各公式サイトと agentskills.io でご確認ください。
2026年10月22日、Anthropicは公式ブログで、「Agent Skills」をAgentic AI Foundation(AAIF)に寄贈すると発表しました。同じ日に、Linux FoundationとAAIFも、Agent Skillsを含む4つの新しいプロジェクトをAAIFに迎えると発表しています。
Anthropicの発表によると、寄贈したのは次のものです。
- Agent Skillsの仕様(規格そのもの)
- 「Agent Skills」という名前とロゴ
- GitHubの組織(仕様やツールを管理している場所)
- 公式サイトのドメイン「agentskills.io」
つまり、Agent Skillsの持ち主が、Anthropicという1社から、特定の会社に属さない団体に移ったということです。今後の運営は、Anthropic、Google、OpenAIなどのエンジニアが個人の立場で担う、とAnthropicは説明しています。AAIFのブログによると、方向性は複数の組織のメンバーで構成される技術運営委員会が決め、仕様はApache 2.0とCC BY 4.0という、誰でも使えるライセンスで公開されています。
Anthropicは今後の計画として、バージョンを付けたリリース、変更を提案するための正式な手続き、スキルを作る人と使う人のためのセキュリティの指針などを含むロードマップを提案しています。
2. Agent Skillsとは何か。「AIのための手順書フォルダ」

公式サイト(agentskills.io)は、Agent Skillsを「AIエージェントに専門知識や作業の流れを足すための、軽くてオープンな形式」と説明しています。
中身はとてもシンプルです。1つのスキルは1つのフォルダで、その中に「SKILL.md」というファイルが必ず入っています。SKILL.mdには、スキルの名前と説明、そしてAIへの指示(作業の手順)を書きます。必要に応じて、次のようなものも同じフォルダに入れられます。
| 入れられるもの | 例 |
|---|---|
| SKILL.md(必須) | 名前・説明と、作業の手順 |
| スクリプト | 決まった計算やチェックをするプログラム |
| 参考資料 | 社内規程、商品の資料、過去の回答例 |
| テンプレート | 報告書や見積書のひな形 |
人に仕事を引き継ぐときの「業務マニュアル一式」を、AIが読める形でフォルダにまとめたもの、と考えるとわかりやすいでしょう。
必要なときにだけ読み込む仕組み
Agent Skillsには、たくさんのスキルを持たせてもAIが混乱しにくい工夫があります。公式サイトによると、AIは次の3段階でスキルを読み込みます。
- 見つける:AIは起動時に、各スキルの「名前」と「説明」だけを読みます。
- 開く:頼まれた仕事がスキルの説明に合うと判断したときに、SKILL.mdの指示をすべて読みます。
- 実行する:指示に従って作業します。必要ならスクリプトを動かしたり、参考資料を読んだりします。
最初から全部を読み込まないので、スキルをたくさん用意しておいても、AIが一度に覚えておく量は少なくて済みます。
どうやって生まれたのか
Anthropicによると、Agent Skillsはもともと、AnthropicがClaude Code(開発者向けのAIツール)を作る中で生まれた仕組みです。2025年10月に公開されたあと、開発者がGitHubで数千のスキルを公開し、ほかのAIツールでもスキルを読み込めるようにする動きが広がりました。これを受けて、2025年12月にオープンな規格として公開され、今回、中立の団体に寄贈されました。
Claude Codeでのスキルの具体的な作り方は、今さら聞けないClaude Code ②スキル編:よく使う手順を"技"にして自動化するで紹介しています。
3. Agentic AI Foundation(AAIF)とは

寄贈先のAgentic AI Foundation(AAIF)は、2025年12月9日にLinux Foundationが設立を発表した団体です。Linux Foundationは、パソコンやサーバーで広く使われているLinuxなど、特定の会社に属さないオープンソースのプロジェクトを運営してきた非営利団体です。
設立時の発表によると、AAIFはAnthropic、Block、OpenAIの3社がそれぞれのプロジェクトを持ち寄って始まりました。プラチナメンバーには、Amazon Web Services、Anthropic、Block、Bloomberg、Cloudflare、Google、Microsoft、OpenAIが名を連ねています。
設立時のプロジェクトは次の3つです。
| プロジェクト | 提供元 | ひとことで言うと |
|---|---|---|
| MCP(Model Context Protocol) | Anthropic | AIを外部のツールやデータにつなぐための共通規格 |
| goose | Block | オープンソースのAIエージェント |
| AGENTS.md | OpenAI | AIのコーディング支援ツールに、プロジェクトごとの決まりを伝えるファイルの形式 |
そして2026年10月22日、Agent Skillsを含む4つのプロジェクトが加わりました。Linux Foundationの発表によると、これでAAIFが扱うプロジェクトは、設立から1年足らずで10件になりました。
| 新しく加わったプロジェクト | 提供元 |
|---|---|
| Agent Skills | Anthropic |
| Open Responses | OpenAI |
| OpenEnv | Hugging Face |
4. どこまで広がっているのか
Anthropicの発表によると、Agent Skillsにはすでに、ChatGPT、Cursor、GitHub Copilot、VS Codeを含む70以上のAIツールが対応しています。
AAIFのブログでは、規模を示す数字として次のものが挙げられています。いずれもAAIF・Anthropicの発表値です。
- 対応するAIツール:70以上
- 公開されたスキル:100万件以上(スキルを集めたサイト「skills.sh」に、約7か月で掲載)
- スキルのインストール回数:約2億8,000万回
同じブログでは、企業での使い方の例も紹介されています。
- Block:社内向けの「スキルの共有場所」に数百のスキルがあり、障害対応、コードのレビュー、実験の設定などに使っています。エンジニアは、Goose、Codex、Claude、Ampなど、自分の好きなAIツールでそのスキルを使っています。
- Brainlabs:職種を問わず、社員がNotionを通じてスキルを提出します。人が確認してから、社内のAIに配っています。GitHubなどの使い方を知らない人でも、スキルづくりに参加できます。
Blockの例は、同じスキルを複数のAIツールで使い回せることを、実際の業務で示しています。
5. 中小企業にとって何が変わるのか

ここからは、公式発表の内容をふまえた本記事の見立てです。
特定のAIツールに縛られにくくなる
AIツールは入れ替わりが速く、「今年はこのツール、来年は別のツール」ということも珍しくありません。これまでは、あるツール向けに作った指示やノウハウを、別のツールに移すには作り直しが必要になりがちでした。
Agent Skillsの形式で手順をまとめておけば、対応しているツールであれば、同じスキルをそのまま使える見込みが大きくなります。規格を1社ではなく中立の団体が管理するようになったことで、「この形式で作っておけば、しばらくは無駄にならない」と判断しやすくなりました。
社内の手順書が「資産」になる
スキルの中身は、結局のところ「自社の仕事の進め方」です。見積書の作り方、問い合わせへの答え方、商品ページの書き方、月次の締めの手順など、ベテラン社員の頭の中にあるやり方を言葉にしてフォルダにまとめたものが、そのままAIの仕事の質を決めます。
Agent Skillsの標準化は、その手順書を、特定のツールに依存しない形で残せるようになった、という意味を持ちます。
規格は「入れ物」にすぎない
一方で、規格が決まっても、中身のスキルは自分たちで作る必要があります。どの仕事をスキルにするか、どこまでをAIに任せて、どこで人が確認するか。ここは会社ごとに答えが違い、規格は答えてくれません。
6. いま始めるなら:最初の1つのスキル
これからスキルを作るなら、次の順番で小さく始めるのがおすすめです。
- 週に何度もくり返している仕事を1つ選ぶ:毎回同じ説明をAIにしている仕事が向いています。
- 今のやり方を、箇条書きで書き出す:「何を見て」「何を作り」「何を確かめるか」を書きます。上司によく直されるところも書いておきます。
- SKILL.mdにまとめる:名前と、「どんなときに使うか」がわかる説明を付けます。説明が具体的なほど、AIが正しい場面で使ってくれます。
- 実際の仕事で使い、直す:AIの出したものを人が確かめ、直したところを手順に書き足します。
最初から完璧なスキルを作る必要はありません。使いながら手順を書き足していくうちに、会社のやり方がスキルにたまっていきます。
7. 使う前に気をつけること

スキルには、指示の文章だけでなく、実行されるスクリプトを入れられます。便利な反面、外部で公開されているスキルを中身を見ずに入れると、意図しない動きをするおそれがあります。
公式も、スキルを作る人と使う人のためのセキュリティの指針をロードマップに入れることを提案しています。指針が整うまでのあいだも、会社として次のことは決めておくとよいでしょう。
- 外部のスキルを入れてよい人と、確かめる手順:中身(指示とスクリプト)を人が読んでから入れる
- スキルに入れてよい情報:顧客の個人情報やパスワードなどは、スキルのフォルダに入れない
- 社内のスキルの置き場所と、更新のルール:Brainlabsの例のように、人が確認してから配る
社員が個人の判断でAIツールや拡張機能を使い始めると、管理が追いつかなくなりがちです。AIの社内ルールの考え方は、従業員の無断AI利用=シャドーAIの記事もあわせてご覧ください。
まとめ
- 2026年10月22日、AnthropicはAI向けの手順書の規格「Agent Skills」を、Linux Foundation傘下の中立団体「Agentic AI Foundation(AAIF)」に寄贈した
- Agent Skillsは、SKILL.mdと、必要に応じてスクリプトや資料を入れたフォルダ。AIは必要なときにだけ中身を読み込む
- Anthropicの発表によると、ChatGPT、GitHub Copilot、VS Codeなど70以上のAIツールが対応。公開スキルは100万件以上、インストールは約2億8,000万回(AAIF・Anthropic発表値)
- AAIFには、AIとツールをつなぐMCPなども集まっており、AIエージェントの土台になる規格が中立の団体で管理されるようになってきた
- 企業にとっては、特定のAIツールに縛られずに、社内の手順書をAIの資産として残しやすくなった。ただし、中身のスキルは自分たちで作り、外部のスキルは中身を確かめてから使う
規格が整っても、AIの仕事の質を決めるのは、スキルに書かれた自社の仕事の進め方です。どの仕事をスキルにして、どう運用していくか。その設計と実装が、これからのAI活用の差になっていきます。
⚠️ 本記事の内容は、執筆時点(2026年11月)の公式発表にもとづきます。対応ツール・仕様・運営体制は今後変わる可能性があるため、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。
出典・参考
- Anthropic「Donating Agent Skills to the Agentic AI Foundation」(2026年10月22日):https://www.anthropic.com/news/donating-agent-skills-to-the-agentic-ai-foundation
- Linux Foundation「Agentic AI Foundation Announces Four New Projects: Agent Skills, Open Responses, OpenEnv, and OpenSandbox」(2026年10月22日):https://www.linuxfoundation.org/press/agentic-ai-foundation-announces-four-new-projects-agent-skills-open-responses-openenv-and-opensandbox
- Agentic AI Foundation ブログ「Agent Skills: Open Standard for Sharing AI Agent Workflows」(2026年10月22日):https://aaif.io/blog/agent-skills-sharing-team-expertise-across-ai-agents
- Linux Foundation「Linux Foundation Announces the Formation of the Agentic AI Foundation (AAIF)」(2025年12月9日):https://www.linuxfoundation.org/press/linux-foundation-announces-the-formation-of-the-agentic-ai-foundation
- Agent Skills 公式サイト:https://agentskills.io

