1. まずは「型」を知る。使い回せるプロンプトの4要素
12個のテンプレートに入る前に、共通する構造だけ押さえておきます。ここを理解しておくと、自社の業務に合わせて自由に作り替えられるようになります。
うまくいくプロンプトには、次の4つが入っています。
| 要素 | 役割 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 役割 | AIに立場を与える | あなたは経験10年の人事担当者です |
| 前提 | 判断に必要な材料を渡す | 対象は中途採用の営業職、従業員50名のIT企業 |
| 指示 | してほしいことを具体的に言う | 求人票のたたき台を作成してください |
| 条件 | 出力の形を指定する | 見出しごとに箇条書き、全体800字以内 |
多くの人が書けていないのは、3つめの「指示」ではなく、2つめの「前提」と4つめの「条件」です。「求人票を作って」だけでは、AIは誰に向けた何の求人か分からないため、当たり障りのない一般論を返してきます。前提を渡し、出力の形を決める。これだけで結果は大きく変わります。
以下のテンプレートは、この4要素をあらかじめ組み込んであります。「」 で囲んだ部分を自社の情報に置き換えてください。
なお、プロンプト設計の考え方をもう少し詳しく知りたい場合は、Gemini版プロンプト設計のルールとコツで解説しています。本記事は「そのまま使える文面」に絞ります。
2. 【採用】求人・面接で使えるテンプレート4選
2-1. 求人票のたたき台を作る
ゼロから書き起こす時間を、確認と修正の時間に変えるためのテンプレートです。
あなたは中小企業の採用に詳しい人事担当者です。 以下の条件で求人票のたたき台を作成してください。 【会社情報】 ・業種:「 」 ・従業員数:「 」名 ・所在地:「 」 【募集内容】 ・職種:「 」 ・雇用形態:「 」 ・想定年収:「 」 ・必須スキル:「 」 ・歓迎スキル:「 」 【出力条件】 ・「仕事内容」「応募資格」「働く環境」「選考の流れ」の4見出しで構成する ・各見出しは箇条書き3〜5項目 ・専門用語には短い補足をつける ・全体で1000字以内
2-2. 求人票を「応募が集まる」表現に直す
すでにある求人票の改善に使います。書き直しではなく、指摘をもらう使い方です。
あなたは求人広告のコピーライターです。 以下の求人票を読み、応募数を増やす観点で改善案を出してください。 【改善の観点】 1. 求職者にとって魅力が伝わっていない箇所 2. 抽象的で他社と差がつかない表現 3. 応募をためらわせる可能性がある表現 【出力条件】 ・「該当箇所」「なぜ問題か」「修正案」の3列の表にする ・指摘は重要な順に5件まで ・修正案はそのまま貼り付けられる文章にする 【求人票】 「 ここに求人票を貼り付ける 」
2-3. 面接の質問リストを作る
面接官によって質問がばらつく問題を、事前の準備で減らします。
あなたは採用面接の設計に詳しい人事担当者です。 以下の募集職種について、一次面接で使う質問リストを作成してください。 ・職種:「 」 ・見極めたい点:「 」「 」「 」 ・面接時間:「 」分 【出力条件】 ・質問は10個 ・各質問に「この質問で何が分かるか」を1行で添える ・回答が浅かった場合の深掘り質問を各1つ用意する ・答えを誘導する質問や、差別につながる質問は含めない
2-4. 面接メモを評価コメントに整理する
面接直後の走り書きを、他の人が読める形に変換します。
あなたは人事担当者です。 以下の面接メモを、社内で共有する評価コメントに整理してください。 【出力条件】 ・「評価できる点」「懸念点」「次の面接で確認すべきこと」の3項目に分ける ・メモに書かれていない事実は補わない ・推測が入る場合は「〜の可能性がある」と明示する ・全体400字以内 【面接メモ】 「 ここにメモを貼り付ける 」
3. 【評価・育成】フィードバックで使えるテンプレート4選
3-1. 人事評価のフィードバックコメントを書く
評価そのものではなく、伝え方の下書きをAIに任せます。
あなたは部下育成に詳しいマネージャーです。 以下の評価内容をもとに、本人に渡すフィードバックコメントの下書きを作成してください。 ・対象者の職種:「 」 ・評価期間:「 」 ・良かった点:「 」 ・課題だと感じた点:「 」 ・次期に期待すること:「 」 【出力条件】 ・事実、評価、期待の順に構成する ・課題は人格ではなく行動について書く ・命令口調にせず、対話を促す終わり方にする ・400字程度
評価コメントの書き方そのものに悩んでいる場合は、人事評価コメント作成プロンプト集も参考になります。
3-2. 1on1の質問を用意する
「今日は何を話そう」で始まる1on1をなくすためのテンプレートです。
あなたは1on1の設計に詳しい人事担当者です。 以下の状況にある部下との1on1で使う質問を用意してください。 ・入社からの期間:「 」 ・最近の様子:「 」 ・前回の1on1で話したこと:「 」 【出力条件】 ・質問は8個、話しやすい順に並べる ・最初の2つはアイスブレイクにする ・「はい/いいえ」で終わらない聞き方にする ・詰問にならない言い回しにする
3-3. 目標設定の文言を整える
抽象的な目標を、後から評価できる形に直します。
あなたは目標管理の運用に詳しい人事担当者です。 以下の目標案を、期末に達成度を判定できる形に書き直してください。 【出力条件】 ・「達成基準が数値または状態で示されているか」を確認する ・期限が明示されているか確認する ・本人がコントロールできる範囲かを確認する ・修正前と修正後を対にした表で出力する ・判定できない目標には、その理由を書く 【目標案】 「 ここに目標案を貼り付ける 」
3-4. 研修プログラムの骨子を作る
企画の出発点を用意させ、検討の時間を確保します。
あなたは企業研修の設計者です。 以下の条件で研修プログラムの骨子を作成してください。 ・対象:「 」 ・人数:「 」名 ・時間:「 」 ・研修後にできるようになってほしいこと:「 」 【出力条件】 ・タイムテーブル形式で出力する ・各パートに「ねらい」と「進め方」を書く ・講義とワークの比率を明示する ・準備物を最後にまとめる
4. 【労務・社内対応】日々の業務で使えるテンプレート4選
4-1. 社内アナウンス文を作る
制度変更や手続きの案内は、書き方を間違えると問い合わせが増えます。
あなたは社内広報を担当する人事です。 以下の内容を社内アナウンス文にしてください。 ・伝えたいこと:「 」 ・対象者:「 」 ・期限や日程:「 」 ・問い合わせ先:「 」 【出力条件】 ・件名、本文、宛先の順で出力する ・冒頭3行で「誰が」「いつまでに」「何をするか」が分かるようにする ・専門用語や社内略語を使わない ・想定される質問を3つ挙げ、それぞれに一文で答える形で末尾に加える
4-2. 社内規程をわかりやすく要約する
規程そのものではなく、従業員向けの説明文を作る使い方です。
あなたは労務担当者です。 以下の規程を、従業員向けにわかりやすく要約してください。 【出力条件】 ・中学生でも分かる言葉に置き換える ・「何ができるか」「何をすると認められないか」「手続きの流れ」に分ける ・原文にない条件を追加しない ・要約であることと、正式には原文を参照する旨を末尾に明記する 【規程】 「 ここに規程を貼り付ける 」
4-3. 会議の議事録を要点化する
長い議事録を、読まれる長さに圧縮します。
あなたは議事録の要約を担当する事務局です。 以下の議事録を要約してください。 【出力条件】 ・「決まったこと」「持ち帰りになったこと」「担当と期限」の3項目に分ける ・担当者名と期限は原文どおりに転記する ・議論の経緯は省き、結論だけを残す ・原文にない決定事項を作らない ・全体500字以内 【議事録】 「 ここに議事録を貼り付ける 」
4-4. 問い合わせへの返信文を作る
従業員からの手続き問い合わせに、迷わず返せるようにします。
あなたは人事部の窓口担当です。 以下の問い合わせに対する返信文を作成してください。 ・問い合わせ内容:「 」 ・社内ルール:「 」 ・必要な手続き:「 」 【出力条件】 ・結論を最初に書く ・手続きは番号付きの手順にする ・締切がある場合は太字で示す ・不明点があれば聞き返せる一文で締める ・300字以内
5. 出力の精度を上げる3つのコツ
テンプレートをそのまま使っても十分に機能しますが、次の3点を意識すると精度が一段上がります。
① 一度で完成させようとしない
最初の出力は「たたき台」と考え、「もっと具体的に」「この部分だけ書き直して」と追加で指示します。会話を続けられるのが生成AIの利点なので、1回で終わらせるのはもったいない使い方です。
② 良い例を1つ渡す
過去に作った良い求人票や評価コメントを一緒に貼り付け、「この文体と構成に揃えてください」と伝えます。抽象的な指示を10個並べるより、実例を1つ渡すほうが早く伝わります。
③ 出力の長さを必ず指定する
字数や項目数を指定しないと、必要以上に長い文章が返ってきます。テンプレートに字数条件を入れてあるのはこのためです。
6. 使う前に必ず確認したい注意点
生成AIを人事業務で使う際は、次の2点を必ず押さえてください。
① 個人情報や機密情報を入力しない
氏名、連絡先、評価の詳細、健康情報などの個人情報を、そのまま入力するのは避けてください。テンプレートで面接メモや議事録を貼り付ける場合も、氏名は「Aさん」などに置き換えてから使います。詳しくは生成AIに個人情報を入力してはいけない?で解説しています。
② 出力をそのまま使わない
生成AIは、事実と異なる内容をもっともらしく書くことがあります。これをハルシネーションと呼びます。規程の要約や制度の説明は特に注意が必要で、必ず原文と突き合わせてください。対策の具体的な方法は生成AIのハルシネーション対策プロンプト5選にまとめています。
なお、上記のテンプレートに「原文にない条件を追加しない」「メモに書かれていない事実は補わない」といった条件を入れているのは、この対策を最初から組み込んでおくためです。
7. まとめ
Geminiを使いこなすために必要なのは、特別な知識ではなく、繰り返し使える指示の型です。
本記事のテンプレートは、いずれも「役割・前提・指示・条件」の4要素で構成されています。まずは自分の業務に近いものを1つ選び、「」 の中を書き換えて使ってみてください。うまくいったものは、社内で共有できる形に整えておくと、部署全体の作業時間が変わってきます。
最後に、テンプレートを使うときの前提をもう一度だけ。個人情報は入力しない。出力はそのまま使わない。この2つを守ったうえで、下書きを作る時間をAIに任せ、確認と判断に時間を使う。それが人事業務における生成AIの、現時点で最も現実的な使い方です。

